天才はそれぞれ独特のスタイルをもつ。
現プロ野球解説者、天才バッターだった落合博満氏と建築家・フラン
クロイド・ライトの独特ぶりをみてみたい。
落合博満氏は現役時代「練習嫌い」で通した。あるとき王貞治さんに
「練習は好きか?」と聞かれ「嫌いです」と即答した。すると王さん
から「青少年に悪い影響を与えるからマスコミの前では練習好きと答
えてくれ」と言われたそうだ。講演会でそう告白している。
たしかに集合での練習は嫌いで「練習嫌い」を公言した落合選手。
だが今となっては「それはライバルたちへの牽制」だったという。
ひとりの時、誰にも負けないすさまじい練習をしており、一部の人だ
けがそれを知っていた。練習姿を人に見せるのを嫌っていただけで、
落合選手の実態は練習の虫なのである。
落合氏が監督になってからは体力のある選手を起用した。なぜなら
練習にまじめに取り組めるからだ。一番まじめに練習したのが荒木、
井端、森野だった。ほかの若い選手は練習から逃げた。その場から今
すぐ逃げたいという及び腰の姿勢が落合監督はすぐに見抜けた。
荒木などの三選手からは「プロの世界でうまくなりたい」という気
持ちがヒシヒシと伝わってきた。目の色が違う。体力があるから朝か
ら晩まで練習しても平然としていた。そういう選手だけがプロに入っ
てからグーンと伸びる。
若手のなかには、やる気も技術もあるのに体力がない選手がたくさ
んいた。彼らはすぐにへばる。2月のキャンプインでハードな練習を始
めるとすぐに体重が落ち、ベルトの穴が二つほど小さくなってしまう。
監督としてそういう選手は使えなかった。
「ベテランばかり大切にして若手を育てない」と言われた落合監督
だが、「若手の多くは練習から逃げていた」となる。
一年通して戦うプロスポーツ選手にとって、体力こそが最重要課題な
のだろう。
落合選手が練習を他人に見せないのと同様に、仕事している姿を見
せない人もいた。建築家のフランク・ロイド・ライトはそんな人だっ
たらしい。
ライトの場合は、練習嫌いというか仕事嫌いだったのではないかと思
えるほどだが、建築家に求められる瞬間的なひらめきやアイデアはス
ポーツ選手に求められるものとはかなり異なるようだ。
ライトといえば近代建築の三大巨匠の一人として世界的に名高い。
1913年には日本の帝国ホテルから依頼を受け、新館設計のために訪日
している。その後もたびたび訪日し設計を進めていたが、大幅な予算
オーバーと工期の遅れで帝国ホテル経営陣と衝突してしまった。
結局ライトはこのホテルの完成を見ずにプロジェクトを外れ、弟子の
遠藤新(えんどうあらた)の指揮によって帝国ホテル本館(別名「ラ
イト館」)が1923年に竣工している。
愛知県の明治村に行けば今もその当時の建物がそのまま保存・公開さ
れている。
★明治村 ライト館
⇒ http://www.meijimura.com/enjoy/sight/building/5-67.html
天才建築家・ライトがどのように仕事をしていたかは謎である。
ほとんどの人がライトの仕事ぶりを見たことがないというのだ。
<明日につづく>