「必ずしも結婚する必要はない」と回答する日本人が全体の7割を
占めるというNHKの調査結果が発表された。30代がその割合がもっとも
高く、88%にも上った。
ニュースをみて「冗談だろう」と思ったが、本当のようだ。
日本人の結婚観に詳しいという横浜国立大学の江原由美子教授は、
「結婚したくない人や結婚に否定的な人がすごく増えているというこ
とではなく、いい人がいれば結婚するという考え方はまだ大多数だと
思う。好きなライフスタイルをそれぞれ自由に選んでいいという考え
方が広がった結果ではないか」と話している。
おいおい、何を悠長なことを。
私は亡国の危機を感じた。結婚しない人がいるのは分かっているが、
全体の7割もが「必要を感じない」と回答するなんて、背筋が凍る思
い以外の何ものでもない。
10年ほど前、セミナーの懇親会であるK社長がこんなことを言って
おられたことを思い出した。
「教育、勤労、納税の3大義務を知らない日本人が増えているが、私
が政治家なら憲法に6大義務を明記するだろうね」とK社長。
「教育」「勤労」「納税」に加えて「投票」「結婚」「愛国」の3つ
も義務に加えるべきだというのだ。
小売店なので日曜日も営業するK社長の会社では社員に「投票休憩」
を与えているそうだ。投票に行きません、という社員には諄々と選挙
と投票の意味を解説し、白紙投票でも構わないから投票の義務を果た
せと指導するそうだ。
見上げた愛国精神である。
「結婚」の義務に関しては、結婚して先祖代々の血を絶やさぬよう
にすることは日本人の義務というよりは人類の義務である、とK社長。
ちなみに「愛国の義務」とは国旗・国歌を敬い、いざとなれば徴兵の
義務にも応じることだという。
そんなK社長が今回のNHK調査を知ってなんと言われるか、興味深い。
結婚について。
「武沢、おまえはしないのか」と同期生に言われはじめたのは25歳を
過ぎたころだった。
当時は男性が20代後半、女性が20代前半で結婚するものという暗黙の
ボーダーラインのようなものがあったと思う。
周囲が次々に結婚するのをみて私もすこし焦り始めた。
27歳でコンピュータによるお見合い相手紹介サークルに入会し3年間活
動した。
適齢期に結婚するのが人として当然のことだと思っていたし、結婚し
て家庭をつくることを大前提にした人生計画をつくっていた。結果的
には31歳で結婚したが、周囲から「お前はいつするのか?」と言われ
たことが目に見えないプレッシャーになっていたのは事実だ。
実家を離れて下宿生活を送っていた当時の私が、何一つ圧力を受けな
かったら、今でものんびり独身生活を送っていたかもしれない。
「お前もいい年なんだからそろそろ結婚しろよ」と相手に迫るのは
マリッジハラスメント(マリハラ)になる。何事につけ、強要したり
圧力をかけることはハラスメント(いやがらせ)だが、人として純粋
に質問したり、アドバイスすることはハラスメントにならない。
反対に、必要以上に遠慮してしまい、適齢期を迎えた男女が婚期を逃
してしまうようなことがあっては気の毒なことではないだろうか。
そんな彼・彼女には人生計画をつくるよう提案しよう。ネットには
たくさんのサンプル書式があるので、それを利用して計画をつくり、
皆で発表しあうような研修をやればよい。
干渉はハラスメントだが、質問や助言は友人・先輩としての努めであ
ると私は思う。