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意味ある凡打

先日のセミナーで日記の大切さをお話ししたところ、40歳前後の男性経営者が発言をもとめた。
「大賛成です。僕も毎朝日記を付けています」という。
何年もの間、朝、二時間ほどの時間を割くのが氏の日課だそうだ。
半分は書くために、半分は読むために充てるという。
数年前まで引きこもりだった氏が、自分克服の手段として始めた日記。
克服した今も会社経営に欠かせない習慣になっているという。

スポーツ選手でも芸能人でも学生でも日記を書く人は成長が早い
成長のための日報を書いているビジネスマンは、何も書かない人より成長する。
単なる記録だけでなく、そこで学んだこと、気づいたこと、ミスの反省と教訓など、今後につながりそうなことを記録し、それを読み返す。
ある意味では日記こそが最強の自分用教材かもしれない

自分教材といえば、先だってプロ野球ファンの T 社長からとても興味深い話をきいた。
品川駅前の大衆居酒屋に着いて早々聞かせてくれた T 社長の話はこんな内容だった。(文責:武沢)

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広島東洋カープが2016年から今年までセリーグ三連覇したが、1991年に山本浩二監督のときに優勝してから2015年までの24年間で、実に18回も B クラス(セリーグ6チームで、4位~6位)になっている。
B クラス率75%の弱小カープが強くなったきっかけは石井琢朗コーチの存在。
石井コーチは2013年にコーチに就任して以来、選手たちに、一つのことを徹底して教え込んだ。
その教えが、広島の選手を変え、結果的にチームを変えていったと言われているんです。
武沢さん、カープの話題なんですが興味あります?
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「あるある。石井琢郎コーチってそんなに凄いの?」
「武沢さんはジャイアンツ一本ですから他チームの事情には興味がないのでは…」
「正直悔しいし、うらやましくもある。強くなる方法なら、どんなことであれ知っておきたいので聞かせてよ」
「じゃあ、続きを話しましょう」

・・・
石井コーチが選手にたたき込んだひとつの教えとは「意味ある凡打」だった。
一流バッターでも3割しか打てない。7割は凡打する。
打の中に意味を見つける打者は3割打てるようになる。
凡打に意味を見つけられない選手は3割打てない。
つまり二流以下の選手になる。
凡打とは、自分の打ち損ないもあれば、相手投手に完全に押さえ込まれてしまうケースもある。
どちらにしろ記録はひとつの凡打。
それをベンチの中で考え、次の打席に活かすために考えを巡らせ、どうしたら次は打てるかを考える。
次の打席でその考えの正しさを検証しようとする。
それを粛々とくり返している選手だけが常時3割打てるようになる。
・・・

「ハッハー、意味深だね。意味ある凡打、実に哲学的でおもしろい。凡打のあと、ベンチでどう過ごすかが勝負なんだ」と私。
「そうなんだと思います。もうひとつは凡打の意味です」
「凡打の意味? ”意味ある凡打”と”凡打の意味”は別物なのね?
「はい、別物です」
「そうか、いよいよ哲学的になってきた。そう言われれば、菊池選手なんか哲学者みたいな風貌だもんね」

ちょうどそこへ生ビールと一皿目の料理「アボガドののり巻き」が運ばれてきた。
T 氏の話は乾杯のあとにしよう。