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ないがしろな敬礼

これで15回目ぐらいだろうか。
Prime ビデオで アルパチーノ主演映画『セント・オブ・ウーマン』を観た。
1992年の映画で、当時52歳のアルパチーノが盲目の軍人(元・中佐)を演じてアカデミー主演男優賞に輝いた作品である。
私の中では『ゴッドファーザー』(三部作)とこの作品が映画の東西両横綱だと思っており、ともに15回は観ているはずだ。

今回の新しい気づきは敬礼の場面。いままでこの場面を見過ごしていたのが不思議だ。
アルバイトとして中佐に随行し、旅先のニューヨークで身の回りの世話をする高校生(男性)。
あるとき、中佐に仕事を命じられ、中途半端な敬礼をしてしまう。
それを空気で察した中佐は、激しく叱責する。
「それは何のマネだ。敬礼はこうやってやるもんだ」と指のあわせ方を教え、キレのある迫力満点の敬礼をする。
圧倒されている高校生に向かって中佐はこう言う。
「お前より優秀な若者がたくさんこの敬礼をしてきた。そして何人も死んでいった。二度と敬礼するな」

敬礼は全力でやるものだ。
中途半端な敬礼など軍隊では決してありえない・・・と思っていたが。
先日、ある方から興味深い話をお聞きした。
第1空挺団がいかに凄いかという話である。
まずは Wikipedia で用語の意味を確認しておこう。

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第1空挺団とは、陸上自衛隊の団のひとつで、特殊作戦群が創設されるまでは陸上自衛隊唯一の空挺部隊であった。
千葉県船橋市の習志野駐屯地に団本部を置く。標語は「精鋭無比」
陸上自衛隊唯一の特殊部隊である特殊作戦群の母体ともなった。
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第1空挺団は、自衛隊で唯一のパラシュート部隊である。
敵の後方地域にパラシュート等で降下をし、その後、徒歩で隠密に敵地に潜入して後方連絡線や指揮所等を襲撃して敵の補給路を断絶したり、指揮を混乱させたりする部隊である。
危険と隣り合わせの任務のため、高い任務遂行力が求められる。

部隊標語にある「精鋭無比」とは、類まれなる選りすぐりの優れた人・部隊、という意味。
東大よりも合格率が低いといわれ、体力・気力・知力のすべてにおいて優秀でなければ入隊できない。
ちなにみ体力の合格基準は次のとおり。(年齢によって少し異なる

・腕立て  82回以上(制限時間2分)
・腹筋   80回以上(制限時間2分)
・3000m   10分38秒以内
・懸垂   17回以上
・走幅跳  5m10cm以上
・鋼鉄球投 6m以上

軍隊における部隊の強さは、規律をみれば一瞬でわかる。
(私は高校野球を時々、球場でみるが、練習前のフィールドノックでどちらが勝つか、ほぼ分かる)

第1空挺団は挨拶の厳しさ、特に敬礼の徹底度合いで有名な部隊でもある。
そもそもどの部隊でも、下級者は上級者に敬礼する。
上級者は下級者の敬礼に対して必ず答礼をする。
万国共通、それは決まりごとである。

だが、部隊によっては徹底度合いに大きな差があるという。
ひどい部隊になると、上級者とすれ違っても平然と下級者同士がお喋りしながら通り過ぎていくし、上級者もそれをとがめない。
有事の際には命をかけて国民を守る義務がある自衛隊隊員でありながら、まるで中小企業の新入社員よろしく「敬礼の確行」や「敬礼の励行」という啓蒙運動が行われている。
「敬礼徹底週間」なるものが設けられている部隊もあるそうだ。

第1空挺団の隊員が、もし敬礼を忘れたら。隊員はその場でシメられる(厳しく指導される)ことになる。
まるでアルパチーノ演じる盲目の軍人が高校生に教えたように気迫満点で指導されたら誰でも縮みあがる。

第1空挺団の心構えを紹介しよう。

<空挺隊員の心構え>
空挺隊員は、常に世界列強の軍隊に比して、遜色のない精鋭無比な空挺部隊となることを目標とし、実践即応の心構えを持って積極・着実に服務しなくてはならない。

徹底的実行
空挺隊員は、事を行うに当たっては、徹底的に実行しなければならない。
また、予め周到な思慮を巡らすことに努めなければならない

有事即応
空挺隊員は、常に物心両面にわたり、有事即応の態勢を整えておくことを留意しなければならない。

不撓不屈(ふとうふくつ)
空挺隊員は、困苦欠乏に耐え、堅忍持久の精神を持って不撓不屈、進んで難局に当たる気概を持たなければならない。

自立と掌握下に入る着意
空挺隊員は、有事の際、独立し行動することが少なくないので、平素から自律の良習を養うとともに、進んで上司の掌握下に入ることに努めなければならない。

下級者としては、復命、復唱及び実行報告を、また上級者としては、実行の確認を励行する事は掌握のための必須条件である。

服装・態度
空挺隊員は、常に服装・身体の清潔等身だしなみを端正にするとともに、毅然たる態度を堅持しなければならない。
これがため、毎日朝礼前後に厳正な服装点検を行うことを例とする。

健康と体力の増進
空挺隊員は、常に健康に留意し、体力の練磨・増進を図らなければならない。

生活の節度
空挺隊員は、常に質実剛健の気風を養い、特に生活の節度を保ち、浪費を慎まなければならない。

敬礼の厳正
空挺隊員は、階級・職責を尊重し、礼節を守らなければならない。
これがため、時と所を問わず、厳正な敬礼を行わなければならない

時間の厳守
空挺隊員は、特に時間を厳守しなければならない。

創意工夫
空挺隊員は、常に創意工夫につとめ、伝統の護持に光を添えなければならない。

行動の迅速
空挺隊員は、その行動を迅速・軽快に行うことを習慣としなければならない。

<明日は、私が聞いた面白い話をしたい>