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人は記憶増幅装置を抱えて生きている

「この夏は新盆でした」とクローバ経営研究所の松村剛志社長。
「マンダラチャート」「マンダラ手帳」の開発者であり、多くの人たちに生きる知恵を与え、敬愛された松村寧雄先生が他界されて早10ヶ月になる。

先生はさかんに「過去は変えられる」と説かれた。
「過去と他人は変えられない」と思っていた私にとって先生のメッセージは斬新だった。
真意を伺ってみると「一切皆空」だという。
この世に実態はなく、すべては私たちの関わり合いによってできている。
つまり過去の出来事や事実そのものは変わらないが、その出来事をどう捉え、どう活かすかは自由に選ぶことができるというのだ。

未来を想像するとき、私たちは無意識のうちに今の状況や気分、それに過去の記憶や体験を参照する。
悲しい過去を背負ってきた人や悲しい気分で過ごしている人は、これからも悲しい人生になるだろうと想像しがちである。
楽しい過去を生きてきた人や、楽しい気分でいる人はこれからも更に愉快になるだろうと考える。
つまり、未来に影響を与えているのは過去の記憶と現在の気分である。

そこで、過去をもう一度きちんと総括しておこう。
どうせなら、思い切り都合よく総括するのだ。

私は(私たちは)すばらしい過去を生きてきた。
こんなに良い出来事があり、こんなに貴重な学びを経験した。
こんなにたくさんのピンチをくぐり抜け、タフになることができた。
そうした礎があるからこそ、これからの私の(私たちの)未来はかくも希望に満ちあふれたものになるだろう、と。

心理学にこんな実験がある。
楽しい映画を見せられたグループと悲しい映画を見せられたグループとで作業効率の違いを比較した。
すると、楽しい映画を見せられたグループの方が20%以上も効率が高かったという。
(心理学者エドワード・ハートの実験)

同じことをしているのに、
・楽しい気分であれば2割も余分にがんばれる。
・悲しい気分は本来の力の8割も出ない。

だったら、毎朝楽しい映画を観て家を出ればよいわけだが、そこまでの時間は取れない。
別の方法で補う必要がある。
たとえば、楽しい本を読むとか、楽しい音楽を聴くとか、楽しいおしゃべりをするとか、楽しいことを考えるとか。

ポイントをおさらいしよう。

過去はいかようにも変えられる。
私たちが未来を考えるとき、無意識のうちに過去と現在を参照する。
人間は記憶増幅装置、あるいは、感情増幅装置を抱えて生きているようなものだ。
過去を楽しく明るく捉えれば、これからも楽しく明るくなる。
過去を変えよう。
今の気分を変えよう。たったそれだけで生産性が2割以上あがる。