顧客創造、マーケティング

松・竹・梅について

「昼食で寿司屋に入りました。店内には並1,500円、上2,000円、特上2,500円の三種類のにぎり寿司メニューがあります。あなたはどれを選びますか?」

あるセミナーでそんな問いかけをしたところ最前列の若い女性が手をあげ、「私はいつも特上です。なぜなら、その店のレベルが分かるから。食べるものに関しては出し惜しみしたくありませんし」と言った。

彼女は例外だろう。
一般的には寿司でもうなぎ丼でも定食でも、真ん中の「上」を頼む人が一番多いと言われている。日本は「中流意識」がつよく、メニューが三つあれば真ん中を選ぶ傾向が強いからだが、個人主義がつよい米国ではどうなのだろう?

実はこんな実験が米国で行われていた。
同じメーカーのカメラを A、B、の二種類から「どちらを買いたいか」選んでもらったところ、値段が高い方の A と安い方の B は半々だった。
ところが、更に安い C を加えて三つの中から選んでもらったところ、A22%、B57%、C21%という結果になった。
米国でも選択肢が三つになると真ん中が一番人気になったのである

以前「オリジン弁当」の幕の内弁当は450円だった。
客単価を上げたいと思った経営者は、メニューを三つに増やしている。
メニュー名を「松」「竹」「梅」とするなら、従来の450円の弁当を「梅」にし、新しく「竹」を490円で、「松」を690円で売り出したのだ。その結果、売上比率は「松」30%、「竹」50%、「梅」20%になったという。ものの見事に客単価アップに成功したのである。
そしてこの比率は米国人のカメラの比率と酷似している。

単純な値上げではなく、選択肢を上に増やす。そうすればお客は着いてくる、という話なのだが、どこかに落とし穴があるのではないかと思えるほどよくできた話である。
客単価を上げたければメニューを松・竹・梅の三つにして、従来品を梅にしなさいというメッセージ、あなたはいかがお考えだろうか。