その他

とても不運な日曜日

「名将の条件はひたすら運である」(司馬遼太郎)

運について考えさせられた。

昨日の朝、映画『デッドプール2』を観た。
映画館を出てオフィスに向かう道中、些細なことで同伴者と口論になり、別行動することを決めた私は流しのタクシーを止めた。
普段、乗るタクシーにはこだわりがあるが、こういう時は何でもいい。
一度も乗ったことがない H タクシーに乗り込んだ。

「丸の内へ行ってください」
「は?」
「丸の内です」
「何丁目?」
「(おいおい、タメ口か。)三丁目です。桜通本町の方に向かってください」
「・・・」
「(聞こえたのかな)桜通り本町ですが」
「ええ」
(なんだ聞こえてるのか。なぜ返事しないの。近すぎてガッカリする距離でもないのに)

1分ぐらい無言で走るタクシー。
禁煙のはずなのに、タバコの残り香がする。
普段なら、ひどいタクシーに乗っちゃったなあ、くらいで流すのだが、こちらも苛立っていた。
白髪が半分くらい混じった60前後の運転士に向かって
「あなたね、聞こえてるなら返事しなきゃ」
「はぁ?」
(今度は「はあ?」か。注意したぐらいで気づく相手ではなさそうだ、と思いつつ、
「目的地を伝えたのだから、返事ぐらいしなさいよ。そういうことって会社から教わってないの?」
「だから返事しましたよ」
「聞こえてません」
「しましたっ!」
「こっちに聞こえてなければしてないのと一緒でしょ」
(すこし声を大きくして)「はあ~?」
信号待ちでこちらをふりかえる運転士。
「タメ口じゃなくて、せめて丁寧語で話せないの?」
「タメ口?・・・・。いったい、おたくはどちらさん?」
「どちらさんって、お客さんでしょ」
「ふぅ~ん~」

何一つ自分の態度が悪いと思っていないようだ。
ここまで教育ができていないタクシーに乗ったのは人生で二度目である。
一緒の空間にいたくなかったので、初乗り料金を払ってその場で降りた。
スマホを取り出し、 H タクシーの代表番号に電話する。
配車係の男性が野太い声で、「すぐに呼びつけて指導します」と言っていたが、その後、指導されたかどうかは分からない。

別のタクシーを拾うため、交通量の多そうな交差点に移動した。
するとどうだろう。
交差点に着いた数秒後に、目の前でハトがはねられた。
白い羽根が宙を舞っていたが、幸い、軽傷だったようでどこかへ飛んでいった。
「いかん、今日はツイてない」とハトの事故で自覚した。

「名将の条件はひたすら運である」というが、そのときの私は不運か悲運が全身を覆っていたのかもしれない。
タクシーを待ちながら、『デッドプール2』の内容を思い出していた。

映画のなかで、ある女性が雇ってくれと主人公の前に表れる。
「君はどんな能力があるの?」と聞かれ「とても幸運なことよ」と答える女性。
「幸運は能力じゃないよ」という主人公に対して「幸運は超能力よ」と返答し、その場で採用される。
これ以上はネタバレになるので書かないが、幸運は能力を超える才能なのかもしれない。
ということは、不運も能力を超える特殊な才能かもしれない。

腹を立てる、口げんかする、声を荒立てる、誰かと言い争う、眉間にシワを寄せ不機嫌そうにする、それらは不運と悲運を瞬時に招き寄せる力があるようだ。
不運と悲運は、本人が持っている能力や魅力をすべて打ち消す魔法のオーラとなる。
その後、改めて拾った T タクシーは普段気に入っているタクシー会社なのに、不思議なことに粗略な対応だった。

午後からおはらいを兼ねてヨガスタジオに行き、身も心もデトックスしてきた。