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おけさ伝説(諸説あり)

金曜日から三日間、佐渡を満喫してきた。
最初の1日半は「経営計画合宿」で、後半の1日半は佐渡観光で。
地酒と魚に舌鼓を打ち、日曜日にはおけさ観光タクシーの北村さんにお願いして、佐渡の歴史から民話、ナイショにしておきたい酒蔵訪問、能舞台、佐渡金山の全容解説、たらい舟体験など、寸暇を惜しんで佐渡を満喫した。

ハー、佐渡へ(アリャサ)、佐渡へと 草木もなびくヨ(ハ アリャ、アリャ アリャサ) 佐渡は居よいか 住みよいか(ハ アリャサ サッサ)。

「佐渡おけさ」の唄いだしである。

なぜ「佐渡おけさ」というのか。
三波春夫の「チャンチキおけさ」にも唄われるほど愛されてきた「おけさ」だが、元は民話である。
諸説あるが、北村さんが聞かせてくれた「おけさ伝説」はこんな物語だった。

むかしむかし、佐渡にある小木(おぎ)の町に老夫婦と飼い猫「おあさ」が暮らしていた。
裕福で面倒見がよい夫婦で、近所の人たちが困っていると、助けてあげたり、お金を貸してあげたりした。
人がよいのでお金を返してもらうことができない夫婦は、やがてお金が底をついてしまう。
猫のおあさにも事情を話し、ひっそり夜逃げの準備を始めた夫婦。
準備が整って外へ出ようとすると、おあさがいない。
「きっと私たちに気づかってどこかへ行ってしまったのだよ」と爺さん。
婆さんは「どうか良いもらい手に拾われておくれ」と手を合わせた。
するとコンコンと戸をたたく音がする。こんな時に誰だろうと戸をあけると、若い娘が立っていた。
「おけいと申します。お噂をうかがって参りました。奉公人として働かせてください」という。
「申し訳ないが私たちは今からこの町を出て行くので、あなたを雇うことはできないのですよ」と主人。
「働きたい」「ダメだ」の押し問答が続いたあと、おけいはこう提案した。
「私はいま1両5分持っています。このお金で商売をやってみてはいかがでしょう?繁盛したら町を出なくてもよいのではありませんか」
「そんなことを言われても私たちは年をとっているし、商売の才能もない」
しかし、おけいさんに押し切られ、老夫婦はそば屋を開業する。

器量よしのおけい目当てにお客は殺到。
おけいも甲斐甲斐しく働いた。
特に唄とおどりが上手でお客に披露することも多かった。
みるみる店は繁盛し、近隣のお店はどこも潤っていった。
そんな時もよく夫婦は猫のおあさの噂をした。
良いもらい手に拾われただろうか?といつも心配する夫婦。
とにもかくにも商売繁盛のおかげで夜逃げをせずとも暮らしていけるようになった。
これもおけいさんのおかげだねと喜んでいたら、ある日の事、おけいさんが店にあらわれない。
「風邪でもひいたのかな?婆さん、みてきておくれ」と爺さん。
婆さんがおけいさんの部屋に行くと、ふとんが敷かれたままだったがおけいさんはいない。
まだ人肌のぬくもりがあるので布団をそっとくってみたら、猫のおあさがそこで息を引き取っていた。

「おけいさん節」がもじって「おけさ節」になったと北村さん。
私はジーンと感動していたら、「まるで猫の恩返しですね」と同行者の K 社長。
たしかに言えている。

ハー、佐渡へ(アリャサ)、佐渡へと 草木もなびくヨ(ハ アリャ、アリャ アリャサ) 佐渡は居よいか 住みよいか(ハ アリャサ サッサ)。

佐渡全体が民話の島と呼べるほどたくさんの民話がある。
美空ひばりの『佐渡情話』も小木に伝わる別の民話を唄ったものだ。

民話の島のなかでも特に「おけさ伝説」にはたくさんの説がある。
猫がおけさ笠をかぶっているお土産が売られているが、その由来も、「おけさ伝説」なのである。