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他人を攻撃してませんか?

私が好きな名言のなかに、フランスの哲学者・アランのこんな言葉がある。

「もし道徳論を書くようなことがあったら、私は『上機嫌』を義務の第一位におくだろう」

いつも不機嫌そうに見える50歳ぐらいの社長がいる。
本人は不機嫌ではないらしいが、誰だって不機嫌に見えてしまう顔と仕草をしておられる。
眉間にシワを寄せ、斜め15度くらいに首をかしげて、頻繁にため息をつく。
長年勤めている社員も社長が笑っている顔を思い出せないほどだ。

社長本人にそのことを伝えると、「集中しているときの癖でして」と言い訳する顔がすでに不機嫌そうである。

「上機嫌は今や、『職務』です」と斎藤孝・明治大学教授。
氏には『上機嫌の作法』や『不機嫌は罪である』などの著書があるが、自分の気分をコントロールできる人が仕事や人間関係のパフォーマンスを上げる、と説く。

たしかに、手紙や葉書、電話などのコミュニケーションでは上機嫌が表に出やすいが、ブログやネット掲示板、SNS などでは不機嫌なメッセージを出しやすくなる。
向こうウケを狙って不機嫌キャラ、つっこみキャラを演じる人もいる。
役者やタレントならいざ知らず、組織で働く企業人が不機嫌とつっこみばかりをやっていたら職場の空気が悪くなる。

『不機嫌は罪である』で斉藤教授は、SNS は不機嫌伝達ツールにもなっていると指摘し、次のタイプの人は要注意と警鐘を鳴らす。

1.「既読スルー」を気にしてしまう人
2.寝る前に1~2時間も SNS やネットサーフィンしてしまう人
3.「いいね!」がないとガッカリする人
4.「炎上」を見かけると、話題をさかのぼってネガティブなコメントを眺めてしまう人
5.毎日「なんだか時間がない」と感じている人

私も一つ二つ思い当たるが、四つ五つ思い当たる人は SNSを断つか、数を絞るかすべきかもしれない。
なぜなら寝起きが不機嫌になるから。

性格は変えられないかもしれないが、「表情と声は訓練次第で変わる」と斉藤教授。
たとえば根っからの怒りん坊の性格は直らないとしても、罵倒する方法以外で自分の気持ちを伝える術を身につければ、攻撃的にならずに済む。
そのためにできるトレーニング法や、おすすめの音楽・映画なども氏の不機嫌本に紹介されている。

不機嫌になりがちな時代にあっては、企業の評価表のトップ項目に「上機嫌ですか」を入れるべきかもしれない。

★不機嫌は罪である(斉藤孝著、角川新書)
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