1956年創業の(株)オリオン工具製作所(浜松、大澄博之社長)は日本初の超硬チップソーを開発した会社として有名だ。
従来、使用されていた工具鋼の丸鋸に比べ、耐久性は約60倍になった。
回転数は3倍の高速切削に耐え、切削面はカンナで仕上げたように美しい。
”仕事がすごくはかどる”と評判になり、同社のチップソーは製造が間に合わないほどの注文が舞い込んだ。
★オリオン工具製作所 http://orion-tool.co.jp/
当然の流れで「オリオンの工具を売らせてほしい」「オリオンの刃物を研磨するサービスを始めたい」など、全国に代理店組織が広がっていった。
毎年一度「オリオン工具代理店会議」も開かれるようになり、今年は節目の40回目を迎えたのである。
5/27(日)、京都ブライトンホテル。
記念講演は私に白羽の矢が立った。新潟の代理店の加藤社長がオリオン工具の大澄社長にご推薦下さり、大澄社長はわざわざ私のセミナーを二度受けて、事前確認していただいた。
日本全国から集まった代理店社長は、30歳代から70歳代までと幅広い年齢層。
「変化が激しいから計画を作らない、のではなく、変化が激しいからこそどこかに漂着してしまわないように、具体的な経営計画を作りましょう」
そうしたことを申し上げていたら、最前列の年配経営者が手を挙げた。
「質問があります。おっしゃることはその通りだと思いますが、我々は代理店という立場です。メーカーのようにモノを作るわけではないので、業績を伸ばすための選択肢は非常に少ない。販売計画ぐらいしか作れないと思っているのですが、代理店が今後、どのような経営計画づくりができるのか、具体的なアドバイスをお願いします」
質問は大歓迎である。良い意味で空気がかき混ぜられる。
じつは時々、それに近い質問を受けることがある。
かつて、ある組合で講演した際も、講演内容に対して反論されたことがあった。
「この組合は自動車依存が70%です。その自動車業界がこぞってアジアへ行ってしまいました。業界の先行きは非常に暗いのですが、そんな中で経営計画を作ったって夢のある計画ができるはずがないと思います」
この二つの質問、性質が似ている。京都の場合、私は次のように申し上げた。
独立した法人である以上、選択肢が非常に少ないというのは思い込みだと思います。
どこで何をやってもよい自由があります。
代理店の経営の自由まで奪うようなメーカーはないはずです。
どのような立場であったとしても、会社が成長し、利益を増やす計画作りをする必要があるのです。
社長はそのために存在すると言っても良いでしょう。
具体的に申し上げると、代理店社長の選択肢は次の四つあるのではありませんか。
1.今のモノを今のお客にもっと売る
・・・深耕
2.今のモノを別のお客に売る
・・・新規開拓
3.新しいモノを今のお客に売る
・・・商品開発、サービス開発、メニュー開発
4.新しいモノを新しいお客に売る
・・・事業開発
この4つを組み合わせて売上げや利益を増やす計画を作りましょう。
一時的に業績の上下動があるかもしれませんが、長い傾向でみたら、着実に成長を続けている会社を目指しましょう。
実際、中小企業にもそうした会社があるのは、経営者がそのように考え、計画し、動いているからです。
その後、会場を移しての懇親会。
フレンチのコース料理をいただきながら談笑していたら、ステージに舞妓さんと芸子さんが登壇し、舞を披露してくれた。
そのとき始めて京都を実感したように思う。
ホテルの玄関までお見送りいただいた大澄社長に「またこれに懲りず、50回めの大会に呼んでくださいよ」と申し上げ、タクシーに乗り込む。
すると大澄社長はお辞儀しながら、「いえ、是非41回のときにお願いします」。
社交辞令とはいえ、大役を果たせた安堵の気持ちで京都駅に向かった。