その他

優れたロボットには心がある

ピザ屋で A 氏とランチ。
一番人気のカプリチョーザが意外に早く出てきたので、仕事の話を切り上げ、雑談をはじめた。
月刊誌『社長最前線!』で連載中の近未来SF 小説【イタッコ2号の冒険】の話題になった。

「青森の霊山にいるイタコをロボット化するという発想、おもしろいですね。先祖の霊だけでなく、どんな偉人の霊でも呼びだせるというのは非常にいいですね。着想はどこから?」
と A 氏。

10年以上前、友人と恐山(おそれざん)に登ったことがある。
案内してくれた運転士が「どなたの霊を呼び出すのですか?」と聞いてきた。
「織田信長か吉田松陰」と私。もちろんジョークである。
運転士は笑いながら「お客さん、親族しか呼べませんよ。たしかフルネームと生年月日が必要だったかな、いや、没年月日だったかな」
信長と松陰がだめなら、親父と話そうと内心で思った。
だがその日、イタコは山にいなかった。

帰りの車でイタコのロボット化のアイデアがひらめいた。
それを小説にしたのが【イタッコ2号の冒険】である。
そんな話を私がすると、「へぇ、おもしろそう」と A 氏。

「ところで武沢さんはどんなアニメが好きでした?」
「そうねぇ、ちょうど僕が子どものときに鉄腕アトムや鉄人28号が始まったのでその二つは特別な存在だった。あと、エイトマン、ナショナルキッド、ウルトラ Q からウルトラマンのシリーズにも夢中になったね」

「一番好きなのは?」
「鉄人28号。あなたは?」
「僕は圧倒的にアトムです」
「なるほど、手塚ファンは多いよね」
アトムの優れたところはロボットでありながら人間が操縦していない点。アトムが人間の心をもって自分で動いている。残念ながら鉄人28号は人間がリモコン操縦した通りにしか動かない」

「キミ、それは少々誤解がある」と私は次のように訂正した。

鉄人はたしかにリモコン操縦で動く。だが、人の心が理解できるロボットなのだ。
もともと軍事兵器として開発された鉄人は勝手に動き、勝手に建物などを手当たり次第破壊するロボットだった。
つまり操縦されなくても自ら動くロボットだった。
あまりにも破壊力が強いので博士たちがリモコンをつくり、人の操縦で動くようになった。
しかしリモコンの役割は、破壊すべき対象を教え、守るべき対象を示すこと。
指示ボタンは「そいつを倒せ」「もっと攻撃せよ」「もういい、止まれ」といったコマンド(命令)である。
なので、右腕を上げろ、それを振り下ろせといった単純な指示を正太郎少年が出しているわけではない。
優れたロボットには皆、心があるのだよ。鉄人然り、アトム然り、エイトマン然りさ。

「あとドラえもん、もね」と A 氏。
A 氏は無類のコミック好き。
それでも鉄人28号の基本性能はご存知なかったようだ。
最初の1巻か2巻に紹介されただけで、あとは解説されていないのでやむをえまい。

いまのところ「イタッコ2号」は心を持っていない。
このままで良いのだろうか。
氏とのランチミーティングは終わったが、大きな宿題をもらった気分でオフィスにもどった。

■ビジュアル版『月刊 社長最前線!』をあなたも購読しませんか?

見本誌はこちら
→ http://www.e-comon.co.jp/magazine/index.html