社員の残業が前提で運営されている会社に人材は集まらない。
今いる社員もいなくなり、応募者は来ないだろう。
先週末のセミナーで「有効求人倍率はバブル期以上の1.5を突破」と話したところ、最前列の N 社長が「我々地方都市の製造業ではすにで求人倍率が2を超えてます」と言う。
ここまでくると人を選考できる状況ではなくなってくる。
応募してくださったこと自体が奇跡的にありがたいことに思える。
働き方を変え、求職者にとって魅力的な会社・職場にすることを経営者は問われているのだ。
そんな中、「情熱・熱意・執念」「知的ハードワーキング」「すぐやる・必ずやる、出来るまでやる」を信条にしてきた日本電産が働き方を変え、2020年までに残業をゼロにすると公言した。
「過去にやってきた働き方が悪いとは全然思っていない。ハードワークすることが間違っているのではなく、生産性が低いまま長時間働くことが問題」と日経ビジネス2018年4月2日号で語る永守重信社長。
元日以外、休んだことがないという永守社長が一代で築き上げた世界を代表するモーターメーカー・日本電産にいったい何が起きているのか。
1990年代から生産拠点を海外にシフトするなどグローバル化を計ってきた同社。
日本より社員の労働時間が短く、休暇も多く取得している欧米企業の方が日本より業績が良いのはなぜか?
日本企業の生産性はドイツ企業の半分しかない、と永守。
事実、主要国で日本は10数年連続最下位の生産性だ。
今後企業体質を変えなければ世界で戦えなくなる、という強烈な危機意識をもった永守社長。
会社にもどって「残業をゼロにする」と宣言したところ、一人の社員が永守社長に投書を寄越した。
「私は毎月50時間分の残業手当も見込んでローンを組んでいます。
もし残業がなくなるとローンが払えなくなります」ここにもひとつ、働き方改革を阻むかくれた要因がある。
しかし永守はこう返信したという。
「残業手当が減った分の半分はボーナスで支給し、残りは研修費用に使っていきます。いままでは生産の高い人は早く帰るから残業代がもらえず、生産性の低い人が残業代を稼いでいました。これからは、生産性の高い人が多くのボーナスをもらえる仕組みにし、残業をゼロにしても年収が減らないか、逆に、増える仕組みにします」
社員の平均年収が減ってしまう仕組みでは働き方改革は進むはずがないと永守社長はみているのだ。
残業ゼロは生産性向上とセットで取り組む必要がある。
生産性向上の取り組みがないまま残業時間の削減に取り組んでいるところもある
が、それは間違っている。
残業時間の半分はもともと意味のない残業。
残りの半分は本当に必要な残業。
意味のない残業はすぐに削減できるが、残りの半分は生産性向上に取り組まないとゼロ化できない。
日本電産が真っ先に取り組んだのが会議のリストラ。
特にホワイトカラーにとって会議はムダの温床になりやすい。
ムダな時間、効率の悪い時間を減らそうと、わずか4ヶ月の改革によっ
て156あった会議の種類が89に減り、開催回数は年間716回から440回に減った。
月間の延べ開催時間も533時間から240時間になった。
4割~5割減、費用に換算すると年間で何千万円削減という劇的な改善効果である。
興味のある方は「日経ビジネス」をご覧になると同社の改革が詳しく紹介されている。
私もさっそく影響を受けた。今朝、ミーティングのやり方を変えたのだ。
ちょっとしたことだが、それだけでも4人のスタッフの月間会議時間は何割か削減されるはずだ。
使用前、使用後で改善効果がわかるように調査してみたいと思っている。
★日経ビジネス デジタル
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/NBD/15/special/032700946/?ST=pc