その他

働き方改革をすすめるための15の課題

最近、ある組合で講演をした。
「残業が多そうだし、休みも少ない。年間の勤務時間も長そうだ・・・。
求職者にそう思わせたら応募が来ません。ですから、働き方の改善計画を作り、求職者にそれを見せる必要がある。少なくとも同業者の中では働き方改革が進んでいると求職者に思われる必要がある」と申し上げた。
すると質疑応答時間に飲食店経営者が挙手し、こんな感想を述べた。

「一般論は理解できますが、うちのようなギリギリの採算でやっている飲食店が営業時間を短縮しようものなら赤字になるだけのこと。この業界や規模では働き方改革をすすめるのは生半可なことではない
生半可でないことを認めつつ、私は逆に質問してみた。

「御社にとって働き方改革とは、具体的にどのようなことを言いますか?」と。
すると、「残業の削減や休日の増加のことだと思います。それは営業時間の短縮や人件費の上昇が前提になる。だから難しい」と社長。

そこで私はまず、政府が定めている「働き方改革を実現する九つの課題」をご紹介した。次のような内容である。

1.同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善
2.賃金引き上げと労働生産性の向上
3.時間外労働の上限規制の在り方など長時間労働の是正
4.雇用吸収力の高い産業への転職・再就職支援、人材育成、格差を
固定化させない教育の問題
5.テレワーク、副業・兼業といった柔軟な働き方
6.働き方に中立的な社会保障制度・税制など女性・若者が活躍しや
すい環境整備
7.高齢者の就業促進
8.病気の治療、そして子育て・介護と仕事の両立
9.外国人材の受入れの問題

この中から、我社にとって重要な課題を定め、その実現計画を作ることが社員のため、応募者のためである。やれること、やるべきことから取り組んでいけばよい。
「そういう具体的な課題が発表されているとは知らなかった」と社長。

その日の講演会はそれで終わったが、政府案を土台に「中小企業の働き方改革15の課題」を独自につくってみた。
「働き方」という言葉を職場環境の改善やコミュニケーションの改善などを含めて広く定義しているのが武沢案の特長。
これら15項目がすべて必要とは限らない。必要なものだけを選んで計画していただきたい。

<中小企業の働き方改革15課題 武沢案>

1.明確な経営理念やビジョンにむかって社内のベクトルを揃える
2.労働生産性の向上対策(使用時間調査と全社GTDの取組み)
3.就業規則と各種規定の再整備
4.賃金是正の計画(目指す給与水準を定義づけする)
5.職場環境の整備、美化
6.社員と非正規雇用者との待遇格差是正
7.残業上限規制など、長時間労働の是正
8.教育制度の拡充と配置転換などで多能工人材の育成
9.役職定年制など、組織の硬直化を防ぐ対策
10.定年の延長および再雇用に関する規約の整備
11.テレワーク(在宅勤務)、副業・兼業の推奨・容認
12.モバイルワーク(外出先での勤務)とクラウド環境整備、ICT
投資
13.出産・子育て、病気治療、介護と仕事の両立などを可能にする
新しい就業規則や規定の整備
14.高齢者、外国人の雇用と活用に関する取り決め
15.社内外におけるハラスメント対策

大切なものは何か、その改善のためにどのような取り組みを行うかを「経営計画書」のなかに盛り込んだり、独立した計画書として社内共有していこう。

今がどういう働き方なのかは問われない。今後、改善されていく計画があるかどうかがまず問われるのである。