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合い言葉は「ピグマリオン」

中国では、「冬至」から九日ずつ一九(いつく)、二九と数える習慣がある。三九、四九、五九、六九と寒さが厳しくなり、七九、八九で厳しさが和らぎ、九九(三月四日ごろ)に至って「陽春」となり、寒さが消える。これを「九九消寒」(くくしょうかん)という。

アメリカが「九九消寒」を知っているとは思えないが、九九消寒の日から一週間遅れの昨日、サマータイムが始まった。
今年のサマータイムは11月4日(日)まで続けられる。こうなると、コートを着て歩くのが野暮ったく感じるが、意外に真冬よりも寒の戻りの方が寒く感じるものだから、まだ手放せない。

さて今日のメルマガ。

昔は詩人が多かった。
職業としての詩人ではなく、詩人気質をもった人が多かったというべきか。
たとえば、連合艦隊司令長官の東郷平八郎は、部下である作戦参謀の秋山真之(あきやま さねゆき)を「智謀湧くがごとし」と評した。
今なら「彼は優れたアイデアマンだ」で終わってしまうところをあえて「知謀湧くがごとし」と表現することで秋山の評価が歴史に残ることになった。

高杉晋作が亡くなり碑を建てることになった。そこで伊藤博文はこんな一文を寄せている。

「動けば雷電の如く、発すれば風雨の如し。衆目駭然として敢えて正視するものなし、これ我が東行高杉君に非ずや」

この石碑はいまも下関に「顕彰碑」として残っている。

詩や書といった文化的なことを嫌っていた吉田松陰ですらごく自然にこんな表現で松下村塾の弟子たちを評した。

『実甫(久坂玄瑞)の才は縦横無尽なり。暢夫(高杉晋作)は陽頑、無逸(吉田稔麿)は陰頑にして皆人の駕馭を受けざる高等の人物なり(中略) 常にこの三人を推すべし』

松陰は手紙では、久坂玄瑞のことを「防長第一流の人物たり、因って亦、天下の英才たる」とたたえた。
また高杉晋作のことも、「識見気魄他人及ぶなく、高等の人物なり」とこれまた最大級である。
指導者たるもの、これぐらいの賛辞で部下をたたえたいものである。
「士は己を知る者の為に死す」というが、最大級の賛辞をおくられると、一肌も二肌も脱ぎたくなるものだ。

ほめられると人は動くのと同じく、人は期待されても動く。

「あなた、すごい子ね」とほめられ、次も同じようにすごいことを期待された子はどんどんすごい子になる。
「あなた、悪い子ね」とけなされ、次は何をしでかすのかとハラハラされていると、その子の悪はエスカレートする。
良くも悪くも人は周囲の期待通りになることは「ピグマリオン効果」で実証済みだ。

アメリカの小学校でかつてこんな実験を行った。
まず、小学生に普通の知能テストをさせ、その結果を担任の教師にこう報告した。
「このテストは将来の学力の伸びが確実に予測できるものです。まだ研究中なので結果を教えることはできませんが、先生にだけ、将来伸びる子の名前を教えましょう」

しかし、そこで教えられた数人の生徒は知能テストの成績に関係なく、ランダムに選ばれた子だった。
それから1年ほどしたあとで、再び知能テストをしたところ、名前をあげられた子は、そうでない子に比べて明らかに成績が上がっていた。
期待することによって、相手もその期待にこたえるようになる、という現象を「ピグマリオン効果」とよぶ。

一流のコンサルタントは企業を訪問したとき真っ先に良い点が目に入るという。
超一流になると、良いところしか目に入らないというが、ピグマリオンに符合するものがある。

・あなたはあなた自身のことをどの程度期待しているか
・あなたはあなたの家族にどの程度期待しているか
・あなたはあなたの社員にどの程度期待しているか
・あなたはあなたのお客にどの程度期待しているか
・・・etc.

合い言葉はピグマリオン、覚えておこう。