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人材はスペックで見ない

Rewrite:2014年3月21日(金)

社長からみて異質な能力をもつパートナーを見つけよう。
社長と副社長、トップとナンバーツーの役割分担の妙といえばソニー、ホンダなどが有名だ。

腕のいいナンバーツーを見つけようとする際、気をつけるべきことがある。それは、仕事のパートナーをスペック(仕様)で選んではならないということだ。
機械のように単純な性能比較をする場合にはスペックはもっとも大切だ。自動車なら馬力やトルク、排気量、燃費などのスペックである。ところが人のスペックとなると、○○の経験がある、△△の資格をもっている、××で部長をやっていた、といったことになるが、これを重要視しすぎると失敗しやすい。

共同出資のベンチャー企業が失敗しやすい隠れた理由もここにある。
特許技術をもった社長のもとに、ヘッドハントした役員・弁護士・会計士・コンサルタント、それにベンチャー資本が結集し、マネジメントチームを結成したという話をよく聞く。スペックで見れば、まさにドリームチームだ。しかし、それでも失敗することが多い。

最大の原因は、リーダーシップがとれないからである。企業経営にとって、トップがリーダーシップを発揮してこそ好ましい方向に会社をもっていくことができる。ましてや創業して間もない企業にとっては、結果のよしあしの問題ではなく、トップがリーダーシップを発揮すること自体に意味がある。
スペックで人を集めると、権限を与えるだけでなくリーダーシップまで明け渡してしまうことになりがちだ。大政奉還というリーダーシップの放棄が徳川幕府の崩壊に直結していったように、トップたるものリーダーシップは明け渡してはならない。

「おのれよりすぐれた者を使いし者ここに眠る」の墓碑銘で有名な鉄鋼王・カーネギーとて、意思決定はすべてにおいて自己判断なのだ。

スペックでの採用がいけないとしたら、何に基づく採用が望ましいか?
それは、価値観とビジョンが共有できることなのだ。書生の議論に聞こえるかもしれないが、仕事の目的とか将来の夢やビジョンなど、トップの考え方に共感できる人材でなければならない。
仮に、トップのビジョンが日本の医薬品を20%コストダウンさせるドラッグストアチェーンを作り上げることだとする。スペックで採用された副社長の夢は、50歳で引退して南の島で隠居生活をおくることだとする。こうした二人が、ともに艱難辛苦に耐えていくことは出来ない。ましてやその部下の価値観となるとバラバラだ。

京セラでは、創業当初「コンパ」と称して、酒をくみかわしながら徹底的に議論した。部署単位でおこなわれるので、稲盛社長にとってはほとんど毎日の行事だ。それでも氏はコンパを重視し、出席しつづけた。コンパで語り合うことは、はたらくことの意味や会社の夢など、青っぽい議論である。それが大切だ。
私の友人に京セラOBがいる。彼がいうには、ときどき何もしらない新人が座を盛り上げようと、風俗かぞえ歌などを唄いはじめるそうだ。
稲盛さんはそれを聞き「君、よしなさい」と、たしなめる。盛り上がることが目的ではない、と言いたいのだろう。