ここは名古屋で人気の中華料理店。
それにあわせるのは、コップ一杯1500円の老酒。
アプリ開発を仕事にする渡瀬社長(55)が突然、「
しばし料理に舌鼓を打ったあと、
「とことん私は不器用な人間です。社長歴25年、
最近、期待していたプロジェクトが大きくこけて、
「そこで、武沢さんの意見を聞きたい。商売下手は治るのか?
「私のセミナーに来れば商売下手が一発で治るよ」と私。
「そのセミナーはいつあります?」と聞いてきた。
そこで私は質問をした。
「渡瀬社長が考える商売上手ってどんなイメージか?」と。
すると彼は老酒を一口すすってこう言った。
「まず、押しが強く、商談上手で人脈を駆使し、
「なるほど、なるほど、何となくイメージがつかめたよ」
二つ目の質問。「商売下手とはどんな人か?」
こちらはスラスラと答えてくれた。
「それは私みたいな人間で、お人好しで思慮が浅く、
「なるほど、そういうことね」と言ったあと、
「
「しぶさわ、ですか」渡瀬社長が前のめりになった。
「そう、あの渋沢」
「『論語と算盤』の渋沢ですよね?」
怪訝な顔をしている。
渋沢栄一は、江戸・明治・大正の三つの元号を生きた。そして、
なぜなら、武士・官僚・
武士は士農工商の最上位に位置し、軍事階級にある。
一方、官僚は役人である。軍事階級ではない。裏方に徹し、
また、実業家は民間人である。事業を拡大発展させ納税や雇用、
渋沢はたった一人でこの三つの役割を完璧にこなした。
私がそこまで言うと、渡瀬社長が口をはさむように挙手をした。
「武沢さん、具体的には渋沢のどんな本を読めばいいです?」
「渋沢が書いた本もいいが、私は『雄気堂々』をおすすめする。
その場で Kindle版を買ったらしく、「
武士・官僚・実業家、それぞれに勉強することは異なる。
城山があえて「魔」ということばを使っているのには意味がある。
一生懸命やる、なんていうものじゃない。とことん徹底して、
老酒をお替わりした渡瀬社長は、腕組みしながら「魔ですか…」
「そう、魔なのよ」と私も腕組み。
「要するに、
損した、得した、ということも二の次。やっている事そのものに『
「魔になれる秘訣は?」と渡瀬社長。
なんでも聞きたがるようだ。
だが私も興が乗ってきた。こういう話題は嫌いではない。
「魔になれる秘訣ね~、うん、僕はこう思う・・・」
<来週月曜日につづく>