Amazon の CEO ジェフ・ベゾスは理想の高い上司だという。
思いが募ると社員に向かってしばしば感情を爆発させる。なかにはベゾスに罵声を浴びたその勢いで会社を去って行く有能な社員もいるそうだ。
そこでベゾスはリーダーシップコーチを雇った。(噂ではあるが)そして怒りをコントロールする努力をしているという。
『ジェフ・ベゾス 果てなき野望』にこんなエピソードがある。
ある時のミーティングで、ベゾスはダイアン・リー(Diane Lye)と彼女の同僚を壊滅的に叱責した。
「そんなに頭が悪いのなら、一週間ほど考えて少しはわかるようになってから出直してこい」
そう罵った。
そして彼は数歩ほど足を進め部屋を出て行こうとした。だが、突然何かを思い出したかのように立ち止まり、踵を返してこう言った。
「だが、みんな非常に良い仕事をしている」
できるリーダーは失敗から学んでいる。
もっとゆっくり学ぶ社長もいる。それでも学ぶことの効果は大きい。
ある地方都市に、経営計画を作っては失敗し、作っては失敗することを何年も繰り返している社長がいた。7年目の発表会のとき、ついに来賓が一人も来てくれなかった。
「どうしたのだろうみんな?」と考え込んだ。そして自分は失敗から何も学んでこなかったことに気づいた。毎年毎年同じように未達成の言い訳を繰り返してきていたのだった。
その年、経営のやり方をトップダウンからボトムアップに変えた。
経営課題をすべて「委員会」で解決していくことにした。社長は委員長をサポートする立場になった。20人ほどの小さな製造業だったが、委員会での社員の発言を聞いて、自分より優れた社員が何人もいることにようやく気づいた。あれから何年も経つが、増収増益の勢いは止まらない。「来賓全員欠席」から社長は学んだのだ。
このように、失敗と真正面から向き合い学ぶことができる個人や会社は成長する。
その反対に、失敗を忌みきらい、済んだことはさっさと忘れて次の挑戦に向かおうと考える人は失敗から学ばない。結果的に成長できない。
『失敗の科学』(マシュー・サイド著、有枝春訳、ディスカバー刊)は私にとって、今年読んだなかでのベスト本である。
同著によれば、失敗から学ぶことが当然のことになっている業界のひとつが航空業界だという。その反対に、失敗はあってはならないことなので失敗があったことをひた隠しにする業界がある。医療業界がその最たる例だという。
その根拠はなにか。そしてそうなる真の原因は何なのかを解き明かしていく同著。ビジネス書でありながら文章も訳もすばらしいので、ところどころドキドキしながらミステリー小説を読んでいる気分になる。
ビルゲイツが「成功はヘボ教師だ。何も教えてくれない」と言っているが、失敗こそが最高の教師であり、教材なのだ。
私たちは失敗に対する考え方に革命を起こす必要があるとマシューは言う。
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※「失敗の科学」については来週につづきます。お楽しみに。