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ハタと困ることは素晴らしい

ベートーベンはピアノの下にバケツを置き、自分の用を足していたという。トイレぐらいゆっくり行けば良いのにと思うが、そんな無駄な時間は一秒もないというのが本人の心境だろう。一時、私はゲームに夢中になっていた時期がある。一分一秒を惜しみ、トイレも食事も入浴もわずらわしい。睡眠すらも煩わしく、15分ほど仮眠してはゲームに戻った。

18世紀のイギリス貴族サンドウィッチ4世のジョン・モンタギュー氏はブリッジやポーカーなどのカードゲームに夢中だった。
フォークやナイフをつかって悠長に食事している時間がもったいない。
カードゲームを中断することなく、片手で食事できるようにとパンに具を挟んだ食べ物を摂っていた。いつしかそれを「サンドイッチ」と人々は呼ぶようになった。(諸説ある)

ほとんど偶然のような出来事から生まれた新製品や新サービスというものがかなりある。
たとえば、アイスクリームにコーン(トウモロコシの corn ではなく、三角錐という意味の cone)を組み合わせたのも、最初は偶然の産物だったと聞いた。(これも諸説ある)

約100年前のこと、アイスクリームは食器に乗せて提供されていた。
ところがある年の夏は猛暑でアイスクリームが売れまくり、あるお店では提供するための食器がなくなってしまった。
そこで困った店の主人は隣のウェハース屋さんの主人に頼みこんだ
「お宅のウェハースを薄くのばし、それにアイスクリームを乗せて提供したいがどうか」「ああいいよ」こうして誕生した二軒のお店の合体策がアイスクリームコーンの始まりと言われている。

ハタと困ることは発明の第一歩である。

戦後まもないころ、仕事がまったくなく困り果てていた東京通信工業(今のソニー)は電気炊飯器を開発した。木製の櫃にアルミ電極を貼り合わせただけの粗末なものだった。案の定、ほとんどうまくご飯が炊けず、失敗作におわっている。もしこの時、炊飯器が大成功していたらソニーは今とはまったく違う会社になっていたかもしれない
その後、ソニーは電気ざぶとんの製造にも乗り出した。こちらは良くできていたようで、飛ぶように売れたらしい。

★ソニー社史
→ https://www.sony.co.jp/SonyInfo/CorporateInfo/History/SonyHistory/1-01.html

奥さんが不器用だったおかげで億万長者になれた男性もいる。
100年近く前の1921年のアメリカでのこと。ニュージャージー州の紡績工場で働いていたアール・E・ディクソンは、妻・ジョセフィーヌが非常に不器用なので困っていた。妻が台所に立つたびに包丁などで指を怪我し、その都度包帯を巻いてあげていた。
「自分がいないとき、妻はどうすれば良いのだろう」
そのことばかり考え続けて結果、妻がひとりでも手当ができる包帯を開発しようと考えた。
その結果生まれたのが救急絆創膏「バンドエイド」で、ディクソンはジョンソン・エンド・ジョンソンに転職し、功績が認められて副社長にまで栄達した。

ハタと困ることは発明のチャンスである。