Rewrite:2014年3月27日(木)
『ネット・プロモーター経営』の中に興味深いエピソードが載っている。
アメリカの大手レンタカー会社「エンタープライズ」では、支店における投票制度が機能しているというのだ。同社は顧客サービスを大切にする会社として成長著しいが、ロンドンのある支店では、毎週月曜日の開店前に前週の顧客サービスの品質について一風変わった調査方法を思いついた。それがスタッフ全員による投票制度なのだ。
やり方は実にシンプル。前週の顧客サービスの品質について同僚全員を一位から最下位まで順位づけする。投票結果は集計され、全員が見られる場所に張りだされるのだ。ただし、その順位にした根拠を説明することも義務づけられている。特に良い行動と悪い行動の具体例をあげることがルールで、極力、肯定的なコメントをすることが期待されているという。
典型的なコメントは次のようなもの。
・電話のベルが三回鳴ってもあなたが電話をとらないことが数回あり、私が代わりに応答して自分のお客様を待たせてしまったので最下位にしました。
・あなたは握手するときお客様の目を見るのが苦手のようですね。
など。
順位が平均以下のスタッフに対しては全員がアドバイスをするのもルールになっている。責任者は一位の社員と、その週にもっとも順位を上げた社員を表彰する。こうした投票制度を取り入れてからは、その支店の顧客サービスの質が向上したという。
それを聞いた他店の責任者はとまどった。
毎週一位から最下位までを順位づけするなんて、あまりに過激すぎるしチームワークが崩壊するのではないか、という懸念である。
だが、投票制度を取り入れた支店では、顧客サービスの質が著しく向上し、地区内の顧客満足率ランキングが最下位からトップに急上昇した。売上も前年比 50%を超える成長を遂げるようになったという。
そうなると経営陣が投票制度の信奉者になった。その結果、二年以内にエンタープライズの全世界の支店の半数以上で投票制度を採用するようになった。
ちなみに同社は会社全体として年率 20%の成長を遂げ市場シェアも伸ばしている。それが投票制度だけのおかげとは言わないが、顧客中心の戦略に取り組みつづけてきたひとつの表れとしてこうした制度が活きているのであろう。