すずめやうずらなどの姿焼きを食べたことがある。味は申し分なく美味しいが、頭部やくちばしあたりの形状が生々しく、好んで食べようという気にならない。長野でコオロギをいただいたときも、それに近い思いがした。課題は見た目、というのは小鳥も昆虫も同じらしい。
「地球少年」こと篠原祐太さん(慶応大学学生)は昆虫食の普及に情熱を注いでいる。「地球少年」が今まで食べた昆虫で美味しかったもののランキングは、
1位:コオロギ(素揚げにすると川エビのよう)
2位:セミの幼虫(エビのような香ばしさ。中華風味付けがよい)
3位:桜の木の下にいる毛虫(茹でで塩で食べると上品な香り)
4位:カミキリムシ(塩や醤油味のバター炒めでクリーミーに)
5位:南米のゴキブリ(味噌や麹に似た香り、中華味で)
だという。
この衝撃の記事は『日経ビジネス2017.05.15号』にある。特集テーマは【第4次「食」革命】。
かなりマニアックな昆虫食の話なので「地球少年」が特別な趣味嗜好の持ち主のように思われたかもしれないが、実はそうではない。
IT、バイオに次ぐ成長分野として「食の革命」にヒトとカネが流れ込んでいると同誌。そのひとつが「昆虫食」であり、「グローバル昆虫食会議」に世界45ヶ国から450人が集まるほどの注目分野だという。
ちなみに来年は中国で国際会議が開かれる予定。
昆虫食はまず家畜などのエサとして導入し、順次、人間用の食品にしようという研究グループがある一方で、いきなり人間向けの昆虫食に取り組むグループもある。
どちらにしても、あと何年かしたら「うまいムシを喰わせる店があるんだ。今度行かない?」「お、いいね!」という会話が成立しているかもしれない。
驚くのはまだ早い。
まるでコーラのように工場で大量生産できる、ぶどうを原料としないワインが開発中で、早ければ今年中にも出荷される見通しだという。
ワインがもつ分子構造を分析し醸造ではなく化学的につくった「合成ワイン」である。既存のワイナリーから反発が必至だし、税法上の問題も残されているが、もしこのワインが本当においしくて安かったらどうなるか。ワイン好きとしては嬉しいような嬉しくないような気分だが、選択肢が増えることは喜ばしい。
「ちょっとオシャレなワイン Barを見つけたから行かない?」
「そのお店のワイン、ホンモノなの?」
「一度確認しておくね」
などと、ややこしい会話にならねばよいが。
「あのヒト、草食系で頼りない」という表現も使えなくなるかもしれない。なぜなら、肉も植物のタンパク質からつくれるようになっているからだ。そうなると牛や豚などの動物性の肉ではなく、植物性の肉のほうがヘルシーで地球への負荷も優しいということになる。
この研究もかなり実用段階にきており、あのマクドナルドの元役員もこの研究の参画者のひとりだという。
ひょっとしたらマクドナルドで「お肉は牛にされますか、それとも植物ですか?」と聞かれる日がくるかもしれない。
※日経ビジネスオンライン
→ http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/051100135/?rt=nocnt