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税理士さんを変えられない社長




スピード時代の経営は、トップの決断の早さ、社員の迅速な行動力が求められる。他社がまだアイデアをあたため行動すべきかどうかどうか迷っている段階で、我社はすでに動いている。先が読めない時代ほど、こうしたスピード経営は武器になる。

問題は、スピード経営の足かせになっているものは何かを知っておくことだ。おそらくそれは「今」であろう。
今のやり方、今の場所、今のお客、今の社員、今のルール、今の…

「今」がすべての足かせになり、「しがらみ」となる。

しがらみは「柵」という漢字を書く。しがらみの意味は、 goo辞書にこう書かれている。

1 水流をせき止めるために、川の中にくいを打ち並べて、それに木の枝や竹などを横に結びつけたもの。
2 引き留め、まとわりつくもの。じゃまをするもの。「世間の―」

なかなか断ち切れないのが「しがらみ」だが、しがらみを切られる側よりも、切る側の方が悩ましいものだ。できるものなら穏便に済ませたいと思うのが人間だが、そうした「惻隠(そくいん)の情」が、「しがらみ」の温床となる。

先日も「今の税理士さんが高齢化して、やる気がなくて困っている」という社長とお会いした。
良い先生をご紹介しましょうか?と私が言うと、「お願いしたいのは山々ですが、その前にねぇ」とためらっておられる。今の税理士さんを断ることができないというのだ。なにしろ先代からのつきあいである、とか、苦しい時に助けてくれた恩義がある、などの理由だ。
特に目立った落ち度があったわけでもないのに、ある日突然、「契約を終わりにしたい」とは言い出しづらいのだろう。

「別れさせ屋」を紹介しましょうか?とは言わなかったが、そんなことも一瞬だけ脳裏をよぎった。特定の個人と個人。どちらか一方が別れたいと思っているが、しがらみがあって別れられない。そんな時の仲介の労をとって、見事に別れさせるビジネスが「別れさせ屋」だ。
たくさんの業者があるし、たくさんのサービスメニューがあるが基本はどこも一緒だ。ほかには、「上手な別れ方」という本まで出ている。

ビジネス版の別れ上手に関する指導が必要なのかもしれない、と思うが、経営者は決断するのが仕事。第三者に頼っているようでは情けない。

決断にふさわしいタイミングを捕らえよう。たとえば、税理士さんを変えるなら、決算を終えて申告が済んだタイミングだとか、担当者の変更、ルールの変更など、何かが変わった(変えた)タイミングなどをとらえればしがらみを断つ口実になる。

今、あなたにはどんな「しがらみ」があるだろう?
変化、改革は「しがらみ断ち」と無縁ではあり得ない。それができる経営者でありたい。