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H 社長の「運の利益率」

昨夜は五反田で『創業者の夜明け』という月例イベントをプロデュースした。主催は株式会社ニュースパイラルで、私は講師選定と当日の対談相手をまかされている。
起業家や個人事業主が多く集まるイベントなので、それにふさわしい講師をお招きしたいというのが主催者の意向だ。

今回は H 社長に講演依頼をした。ブックオフのフランチャイズを3店舗経営するほか、今春にはトンカツ宅配の事業にも参入する野心家である。H 社長は人前で講演するのは初めてということで最初は依頼を受けるべきか否か、ためらっておられたようだ。ところがイザ蓋をあけたら、実に堂々とした講演で驚いた。どうして堂々とされていたのかは懇親会のときに謎がとけた。
「入念な準備に尽きる」ということだ。しかも自分が体験したことしか話さないように心がけたことが功を奏したようで、実体験なのでインパクトの強いお話しになった。
以下、私が印象に残ったところをご紹介したい。

私(H 社長)は今年50歳になるが、この講演をお受けするにあたって、自分の人生に影響を与えた方々を棚卸ししてみた。それがこの表です。(ホワイトボードに人脈マップを貼りだす)

仕事関係では元の勤務先「ワタミ」の渡邉美樹社長と、今 FC をしている「ブックオフ」の創業者、坂本孝社長の影響を強く受けた。
実はこのお二人の経営者には私の方から手紙を書いてアプローチした。
本や雑誌で語っておられることに自分が大きな感銘を受けたことや、自分は何者であり、これからどのように生きていきたいか。また、できればお目にかかってこんな内容について直接お話しを伺ってみたい、などの内容を便せんにしたためて送る。おそらくいままでに数十人近い方に送っただろうか。

縁のある方はすぐに返事を下さる。渡邊社長も坂本社長もすぐに返事をいただけた。そして、すぐにお会いすることもできた。
うかがってみると、どんな有名な経営者でも熱烈なファンレターめいた手紙が届くことは意外に少ないようで、私の手紙は相当な印象を与えたそうだ。

邱永漢先生にも同じようにお手紙をお送りしたが、すぐに会って下さり少人数での台湾ツアーにも参加させていただく機会を得た。
マンダラの松村先生にも、合気道の丸山先生にも、資金指導の野呂先生にも自ら門を叩いてご指導をあおぐことにした。
私の人生に影響を与えてくださった方の多くは、受け身ではなく、自分から縁を求めていった方が多いことに気づく。

『ビジョナリーカンパニー4』のなかに「ROL」(運の利益率)という面白い概念が紹介されている。英語で Return On Lack の頭文字だ。人の縁もある意味、運である。自分が生きる戦略を運任せにするという意味ではなく、誰にもほぼ平等に訪れる幸運と不運をいかにマネジメントし、幸運を最大化し、不運を耐える力を養うか、ということで人の幸福と不幸がわかれていく、というような概念である。

私は今日、こうして他人様の前でお話しさせていただく機会を得ているが、決して良いことばかりが起きたわけではない。言えないような失敗やみじめな思いもしてきた。やる気が起きずに困ったこともある。だけどトータルでは「ROL」の結果がとても良かったと思っているし、50歳になったばかりなので、まだまだこれからも人の縁を求め、縁を大切にして生きていこうと思っている。

・・・。
いかがだろう。
以上のようなことを話された H 社長。内容もさることながら、飾らず気取らず自然体だったので、すべてを受け入れることができたように思う。それは、ひょっとしたら合気道四段の H 社長ならではの気功術のせいかもしれないと今朝になって思っている。