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K 社の社員アンケート

専門商社の K 社(社員数200名)は社員の定着率が年々悪化傾向にある。やる気がある優秀な若い社員が辞めていく。残業が慢性化しているが業績は横ばいがつづき、給与も賞与もあまり上がっていない。
社員の平均年齢はジリジリ上昇し、間もなく50歳に到達しようとしていた。

そこで昨年暮れに、人事部長の発案で詳細なアンケートを取ることにした。質問は200項目以上に及ぶ膨大なもので、大項目として次の12個ある。

1.ビジョンと理念
2.コミュニケーション
3.目標と成果
4.職場環境
5.規則と規定
6.採用と教育
7.評価・賃金・昇進・昇格
8.降格・降給
9.顧客との関係
10.ITと生産性
11.業界活動と地域社会
12.その他

「4.職場環境」のなかに数個の質問があるが、その内の二つがこちら。

1.あなたが働くワークスペースはどの程度快適ですか?10点満点でお答えください。

2.あなたのワークスペースが不快に感じることがあるのはどんな時ですか?

それに対して寄せられた意見を集計すると、意外にも空調とトイレに関する不満が強いことがわかった。

・トイレの個室が少ない
・課長のトイレが長い
・トイレがウォシュレットでない
・トイレの男女が分かれていない
・化粧スペースがない
・オフィス内がいつも暑い(寒い)
・(煙草など)のニオイが気になる
・周囲の話し声が気になって仕事に集中できない
・買い物(コンビニなど)が不便
・昼食時に行けるお店が限られている

今回の調査で一番点数が低かったのが「2.コミュニケーション」だった。

1.社内におけるコミュニケーションはどの程度円滑ですか?10点満点でお答えください。

2.コミュニケーションが円滑に感じないときがあるとすれば、それはどんな時ですか?

この質問に対しては、管理職や経営陣に批判が集中した。

・上司(社長)からのメール返信が遅すぎる
・上司(社長)からメール返信がないことがしばしばある
・上司の機嫌が悪く、部下に冷たくあたることが多いのでチームの雰囲気が壊れる
・上司が人として好きになれない
・物品購入の稟議基準があいまい。上司の気分次第である
・自分の意見が上司の段階で止まってしまい、その上に届かない
・周囲に誰もいないとき上司・同僚によるパワハラ(セクハラ、マタハラ)がある
・毎日の日報が無駄に思える

社員から寄せられたすべての問題は「解決すべき問題リスト」に登録され、枝番がふられた。その結果、問題は509個あることがわかった。
「トイレがウォシュレットでない」「上司が好きになれない」「日報が無駄に思える」というのも本人にとっては切実であり、退職の引き金になりうることだ。

反面で、会社や組織には問題がつきものである。よって、すべての問題を解決する必要はないし、それは不可能なこととも言える。
深刻度の高い問題を特定し、優先順位をつけて問題を解決していく必要がある。

K 社では、「コミュニケーション」の平均点数が4.3点と最も低かったことから新たに「コミュニケーション委員会」を設置した。
そして、点数がもっとも低かった部署(開発部)と、点数がもっとも高かった部署(カスタマーサポート部)を比較するためにくわしい実態調査を行った。

その結果、意外な問題が見つかった。

<あすにつづく>