Rewrite:2014年3月27日(木)
ある朝、早めにオフィスに着いて本を読んでいたら電話がなった。本が面白い場面にさしかかっていたし、始業前でもある。そのまま放置していたが、10回を過ぎても切れない。よほどの用事かもしれないと思い受話器をとりあげた。
「おいそがすぃどこ、もしわげねが」と女性の声。東北弁なまりだろうか、若い女性の声だ。
“いったい何だろう”、心に疑念が浮かぶ。
話を聞いてみたら通信コストを下げる提案だという。要するに飛び込みの営業電話だったわけだが、東北弁丸だしの営業電話は印象的だった。たまたま興味がなかったのと、本の続きが読みたかったので早々にお断りしたが、今まで受けてきた営業電話とはひと味もふた味も違う印象だった。もしその女性の会社が、営業に特色をもたせるためにあえて地方の言葉を話す社員を採用しているとしたら、それもひとつの戦術といえるだろう。
40歳を過ぎても人づきあいが苦手だったという岩崎一郎氏がアメリカの街頭で 3,000人に声をかけた。それは、自分を克服するトレーニングであった。その結果、見事に変身を遂げた岩崎氏だが、トレーニングで学んだのは、「話がうまい人のマネをするのは逆効果」であるということ。話が苦手な人は、それを前提にした話術を身につけないと一生コンプレックスから抜け出せないという。
話そうとせずに聞き出そうとすることが大切であるわけだが、いたずらに質問を投げかけても相手に怪訝に思われてしまう。そこで様々な工夫が必要となるわけだ。話術コンプレックスをもった人が瞬時に相手との距離を縮めるための知恵が氏の本に書いてある。
たとえば相手の人に立ち止まってもらう工夫。アメリカには「 Hi! 」という言葉があり、それを無視する人はほとんどいない。たとえ路上で知らない人にそう言われても、よほど怪しげでない限り、とりあえずは「 Hi! 」を返してくれるそうだ。
ところが日本には ハイ!に相当する言葉がない。路上でいきなり「やぁ!」では馴れ馴れしい、「こんにちは」では怪しげだ。そこで岩崎氏は「すみません」と声をかけてみた。だが、キャッチセールスやナンパと思われるのか、顔も向けずに足早に立ち去るばかり。
そこで、「すみません、道をお尋ねしたいのですが…」に変えてみたら高確率で止まってくれるようになった。これが「つかみ」というものだろう。