Rewrite:2014年3月27日(木)
今日はこんな男もいる、という意味で友人のコンサルタントをひとりご紹介したい。
名古屋のハタ コンサルタント株式会社の社長、降籏達生(ふるはた たつお)さんである。建設業界に特化し、「がんばれ!建設」というメールマガジンも発行しておられる。ごていねいに、「がんばれ!社長」の「がんばれ」を使っていいですか、と仁義を切りにこられたほど律儀な方である。 1961年 2月 23日に兵庫県神戸市生まれ。
経歴がふるっている。
小学生の時、映画『黒部の太陽』(三船敏郎、石原裕次郎出演)をみて、困難に負けずにトンネルを掘り進む男たちの姿に憧れた。世紀の難工事といわれた黒部ダム建設にまつわる実話であり、株式会社熊谷組がモデルになっていた。
降籏さんは「これこそが男の仕事だ」と思い、大学で土木を専攻し熊谷組に入社した。トンネル工事、ダム工事、橋梁工事の施工・設計に携わり、早朝から深夜まで現場に張りつく日々をおくった。ハードな毎日だったが、目の前に巨大な建設物ができあがっていく喜びを感じながら充実していたという。
ところが 1995年 1月、降籏さんが 34歳のとき転機がおとづれた。
地元・神戸をおそった大震災である。一命をとりとめたものの、故郷・神戸の惨状を目の当たりにし、郷土の復興は建設業界にかかっていると強く思った。そこから「がんばれ!建設」の思いで独立を決心し、株式会社ハタ コンサルタントを設立した。
独立後は建設技術コンサルタントとして建設技術者研修をはじめた。
いまでは、延べ 4万人が降籏さんの講義を受講し、指導現場は 1000件を超えた。日本中の建設企業から信頼を得、NPO法人「建設経営者倶楽部」も設立した。建設業向けメルマガとしては異例の 12,000人の読者をほこる「がんばれ建設~建設業業績アップの秘訣~」の発行のほか、著書もたくさん書いてきた。
東日本大震災以降、日本中の建設技術者が不足しているという。特に職人不足は深刻で、東北や関東に職人がとられているとなげく地方建設業者の声も私の耳に入ってくる。それに加えて、2020年東京五輪・パラリンピックが決定し、ますます職人不足がエスカレートしかねない。ある意味では建設業界は空前の好景気を迎えつつあるわけで、「降籏さんにとってもチャンスですね」と水を向けた。ところが氏は浮かない顔をしている。
氏の苦悩は別のところにあるようだ。
小泉政権の行政改革で公共投資はストップした。その後、民主党政権では「コンクリートから人へ」をマニフェストに掲げ、公共投資をさらに削減した。それによって日本の優秀な技術者は仕事を失い、職人は転職し、建築家やエンジニアになりたいという学生は激減した。ようやくここにきてアベノミクスで株や土地が値上がりし、東京五輪も決まり、国土強靱化基本法が国会を通過した。業界はバラ色に見えるが小泉政権以降の失われた 10年のツケは一朝一夕には消せない。
「だから、僕(降籏)が『黒部の太陽』で感動し建設業で働きたいと思ったように、これからそう思ってもらえるように子ども達を啓蒙するのが私の責任でもあるのです。そのためにはいま、建設業で働いている人たちも誇りと笑顔をとりもどすことが大切です。そのためのメルマガやセミナー、YouTube 動画で業界を元気にし、エンジニアを夢みる子どもをつくろうと、学校をまわるのも私の仕事です。実話をもとにした文集や動画をつくって出版するのも私の仕事です」
「私の夢は、子供がなりたい仕事ベストテンにエンジニアを入れることなのです」とキッパリ。
目先の企業業績ばかりに目が奪われるのではなく、子どもがあごがれる業界をつくることにまでコミットメントしている降籏さんから私も学ぶことが多い。氏は今日も猛スピード全国を翔けていることだろう。