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ネット・プロモーター経営

Rewrite:2014年3月27日(木)

ある会社の経営計画発表会に招かれた。今年で二回目の開催になるそうで、前もって社長からこんな相談をいただいた。

「昨年は初めての開催だったのですべてが手探りでした。社員にどれだけ方針が伝わったのかもよく分からないまま終わってしまいました。そこで今年は、記入式のアンケートで感想を書いてもらおうと思うのですが、実名記入が良いですか、それとも名前は伏せたものでよいでしょうか?」

アンケートを取って本心をさぐろうという試み自体は賛成だが工夫が必要だ。単なる作文で終わってしまっては意味がない。そこで私はこんな提案をした。

「1分で済む簡単な質問を用意しましょう。社員の心が一発でつかめる可能性がありますよ」
「そんな方法があるのですか?」
「ええ、あります。それは NPS(Net Promoter Score)といわれるもので、こんな質問を社員にするのです」

・質問1:
あなたは、大切な友人や家族にわが社で一緒に働くことを奨めたいと思いますか? 10点(満点)から 0点(最低)までの間で点数で回答してください。
・質問2:
そう思う最大の理由を書いてください

この質問を経営計画発表会のあと実施する。回答は無記名式がよいだろう。社長はその結果を点数で集計する。

・10点と 9点を付けた人を「推奨者」という。アイデアを積極的に広めてくれる熱心な人のこと
・8点と 7点の人を「中立者」という。自分の胸のうちだけにおさめておく人のこと
・6点未満の人を「批判者」という。魅力が伝わらず、疑念や不満をもってしまった人のこと

点数のつけ方は「推奨者の比率」-「批判者の比率」である。仮に推奨者が 50%いて、批判者が 30%いたとすると 50-30=20点というのがスコアになる。推奨者を増やし、批判者を減らすのが活動目標になる。

これをネットプロモータースコア(略して NPS)という。
・ネット(正味)
・プロモーター(推奨者)
・スコア(点数)
つまり正味の推奨者がどれだけいるかを算出するもので、この点数が高いほど未来は明るいことを意味する。本来は自社の製品やサービスを顧客がどう判断しているのかを問うために編みだした質問だが、わが社で働くことに置きかえて質問することもできる。

これに関する文献は『ネット・プロモーター経営』(フレッド・ライクヘルド、ロブマーキー著、プレジデント社)で、とても良くできた本である。

ネットプロモーター経営


経営者がめざすものは、企業の永続的発展である。そのためには、目先の財務のスコア(決算書)を良くすることだけが目標ではない。財務スコアは目にみえる利益や資産しかとらえることができないからだ。
仮に営業利益 1,000万円という数字があったとしても、それが顧客や社員の感謝の上に成り立っているものなのか、不満と恨みの上に成り立っているものなのかは読み取ることが困難なのである。

顧客があなたの会社の製品・サービスをどのように思っているか、社員があなたの会社の現状と未来をどのように思っているのか、それを知るための究極の質問が NPS 用のこの質問なのである。

顧客用:
あなたはこの会社の製品・サービスを友人や同僚にすすめる可能性はどのくらいありますか。0点~10点で表してください。
社員用:
あなたは働く場所としてこの会社を友人や家族にすすめる可能性はどのくらいありますか。0点~10点で表してください。

追加するならこの一問も有効だ。「その点を付けた最大の理由をお教えください」