ある若者起業家がいた。5年前、
近所で成功している A さんの周囲にはすごい経営者がたくさん集まっている。面識はないが、僕も A さんの仲間に入れてもらうことができれば、仕事はうまくいくはずだ。若者はそう思った。
「ご近所のよしみで是非」
カウンターに腰かけながら揚げたての天ぷらを美味そうにほおばる Aさん。若者は A さんを質問攻めし、たくさんの貴重な話を聞いた。
もちろん天ぷらも極上の日本酒もしこたまいただいた。
・・・。
二次会に行こうとホテルの Bar に誘われた若者。少しクセがあるがドミニカ産の葉巻もおいしかった。若者はいつしか A さんに友だち扱いされているように思った。調子に乗った若者は口が軽くなった。
A さんの表情はくもった。
「そういった話をここでされても困るな。
「あ、いえ。誤解なさらないでください。
「笑い話だとしたらセンスがよろしくないね」
帰り支度を始める A さんに向かって若者は言った。
「ブログで拝見した A さんの定例勉強会に僕が参加してもよろしいですか?」
「構わないよ。君も経営者だから参加資格がある。
「わかりました。ついては、お願いがあるのですが・・・」
「どんなこと?」
「勉強会の講師として私にもプレゼンさせていただけませんか。
「う~ん、君のことはまだ僕が理解しているとはいえないので」
「それがダメでしたら私を”仲のよい友人”
あらためて若者の方を向き、 A さんはこう言った。
「君には禅書の『無門関』を読んでもらいたいな。
しかし、意外なことに若者はこう言った。
「その本はきっと読めば価値あるものだということは分かります。ただ、禅問答している余裕はありません。
<明日につづく>