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経営者ニューロン その2

社長業とは、思いを現実にする職業だ。思いの内容は様々ある。

・物心両面で社員を幸せにしてあげたい
・すべてのことに最善を尽くす人間集団でありたい
・お客様に喜ばれ、愛され、支持される企業でありたい
・地域社会ならびに日本、そして世界に貢献したい
・人が安心して働き、育つ会社でありたい
・家族に充分報いてあげたい
・ゆとりある資金力と強じんな財務体質を築きたい
・業界のリーディングカンパニーになりたい
・技術力と製品力においてオンリーワンと呼ばれる存在でありたい
・仕事を通して豊かな人間関係を築きたい
・・・etc.

これらは社長の「思い」だ。願望でもあり、夢でもあり、決意でもある。これらの「思い」を凝縮したものが経営理念や経営哲学となって文章化される。

さて、人間の頭脳には「ニューロン」という情報伝達細胞がある。
このおかげで私たちは、知識を仕事に応用したり、新たな知恵がひらめいたりするわけだ。
夢を現実におきかえるときにも、このニューロンのお世話になる必要がある。

経営者にとって必要なニューロンとは、作文能力と計数能力だ。この2つの能力がニューロン役となって、あなたの「思い」を現実の目標や計画、そして実績につなげていくのだ。

冒頭にあげた様々な「思い」は、最初は社長の頭のなかにある。頭の中にある段階では、何も起きない。自己満足の世界だ。口で言うだけでは、毎回内容が違ってくる。
「思い」を文章にすることによって、初めて部下と語りあい、夢を共有していく作業を始めることができる。
ゆえに、まず必要になるのは作文能力という「ニューロン」だ。

次に必要になるのが「計数能力」というニューロンだ。これは、社長の「思い」を、具体的な目標にするときの必須能力となる。
言葉や概念を、何らかの数字目標に置きかえるのだ。

例をあげて考えよう。

・社員に報いてやりたい→平均賃金水準目標を掲げる、分配率目標を掲げる、年間総労働時間目標を掲げる、年最低○○回は対話する、など

・お客様に喜ばれたい→購買リピート率目標を掲げる、紹介客数目標を掲げる、など

・財務体質の強い安定企業を作りたい→自己資本比率やキャッシュフローなどの目標を掲げる

このように、「思い」とは具体的な数字目標に置きかえることが可能だ。
数字目標に置きかえることが不可能な「思い」もある。例えば、

・充実した毎日を送りたい
・使命感に満ちた仕事をしたい

これらは数字にすることが困難だ。
つまり、概念としては共有できても経営活動の尺度にはならない。従って、部下とこの「思い」を共有することは事実上無理なのだ。

また、「思い」をむりやり数字に置きかえると弊害が出ることもある。
本質とは、かけ離れた目標になる可能性もある。しかし、その時は修正すれば良いだけだ。弊害の危険性を恐れて数値化の努力を放棄してはならないのだ。

まとめ

1.あなたの「思い」をすべて文章にしてみよう。
2.文章になった「思い」を数値目標に置きかえよう。

「夢」とは、言葉や概念だ。
「目標」とは、夢に期限と数字を加えたものだ。
「計画」とは、目標を達成するための方法論だ。

これらが3点セットになって夢は実現する。このプロセスで必要なのは、作文能力と計数能力の二つだ。
その二つの能力があることによって、目的地から今いる地点まで縄ばしごを降ろしてきてくれるのである。