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複数年契約

イチロー選手が来年からメジャーリーグのマリナーズへ行くことになった。サッカーでも多くの日本選手が外国で活躍し始めている。以前は、日本選手が外国へ行くときには多分に「技術留学」的な雰囲気があったが、最近は文字通り、即戦力を期待されていく点がたのもしい。

このような外国チームとの契約が日本国内のチームに与える影響も無視できない。例えば複数年契約という制度や、基本年俸+成績報酬という制度だ。今回でもイチロー選手は、3年契約か6年契約かの選択を求められている。そして3年契約を選んだ。その理由は3年以内に結果を出し、その後、更に有利な条件で交渉しようというイチローの自信だ。

国内企業でもそうした事例が増えている。リクルートからNTTドコモへ移籍し、iモードを立ち上げた松永真理氏もそのひとりだ。氏は、ドコモから提示された、3年契約か、定年まで契約かのオプションにおいて、3年を選択している。これも一つの複数年契約だ。

東証一部のエイベックス株式会社は、本年11月1日付で前ソニー・ミュージックエンタテインメント社長の功刀良吉(くぬぎりょうきち)氏を特別顧問として迎えた。功刀氏は主に会長特命事項を担当し、新規事業の開発などに従事する、とのことだ。これも複数年契約であろう。

プロはひとつの組織で定年まで骨をうずめることを望まない。一定期間の中で、自分の役目を果たすことに価値を見いだす人たちが今後ますます増えるのではないか。こうした複数年契約は、従来からあった雇用契約や顧問契約と大きく異なるものであり、中小企業の求人活動でも真剣に検討すべき課題だ。

複数年契約+年俸制(成果給付き)で人材確保を考えてみよう。求人誌での募集も悪くないが、あなたの知人の専門家や経営者、管理者、優秀な営業マン、企画マンなどすべてがその候補者だ。かつて、ロッテオリオンズの落合選手が中日ドラゴンズに移籍した際、「落合効果」なるものが話題となった。落合選手の活躍そのもの以外に、落合選手のプロフェッショナリズムやバッティング技術などが他の選手に好影響を及ぼしたのだ。
iモードの松永氏もお堅いドコモの社風に風穴をあけ、松永効果を与えている。そうした副次効果も無視できない。

一昨年、ある印刷会社が、友人のソフト開発の会社と合弁で会社を設立し、新事業への参入を企てた。しかし、中小企業同士の合弁は、双方の戦力分散になることが多く、この場合もうまくいかなかった。そこで、合弁会社を清算し、印刷会社がソフト会社の専務をレンタル契約で受け入れることにした。この契約は双方にとってメリットをもたらしている。

勝つためにあらゆる手段を駆使して、頭脳と経験を入手する。そんな企業努力を怠ってはならない。