★テーマ別★

事業再生士という存在

「借金も甲斐性のうちや!」と嘯(うそぶ)きながら借金を重ね、派手な言動で注目を集める社長がかつては多かった。金余りの好景気のときである。

だがバブル経済の崩壊は、借金経営がいかに危険なことであるかを白日の下にさらした。その後、日本企業(特に中小企業)の経営が堅実化したかというと、派手ではなくなったが良くなったとは言えない。
依然として運転資金を借入に頼っている会社は多く、いつまでも借入が減らない会社が実に多い。

今月、事業再生士の喜多洲山会長(株式会社喜望大地)にお目にかかった。開口一番「もっと早く相談に来てほしい」という。
どうして今まで放置しておいたの、と言いたくなるそうだ。せめてあと半年、いや、三ヶ月前であればもっと楽に助けられたのに・・・というケースが実に多いそうだ。

盲腸といっしょで、我慢のしすぎは命取りになる。経営をしていて次のような現象が続くなら、すぐに事業再生士に相談すべきだろう。

1.社会保険や税の納付ができなくなった
2.仕入れ代金や外注費の支払いに滞りが出た
3.今まで借りていた銀行が新規の融資を断ってきた
4.給料の遅配がはじまったとき(役員報酬の遅配も含む)
5.カードローンやキャッシングの利用が頻繁になった
6.消費者金融を利用するようになった
7.お金の不安で安眠できなくなった

健康診断みたいにちょっとした点検に洲山会長のオフィスを訪ねてこられる社長もいるそうだ。
なかには、「まだ大丈夫ですから、がんばって下さい」と励ましてお帰りいただくこともあれば、即刻入院(再生指導を始める)が必要な場合もある。
とにかくひとりで無理をせず、客観的な第三者に診察してもらうと良いだろう。初回診察料はたいてい無料だから、ありのまま洗いざらい相談するといい。もちろん守秘義務は守られる。品川と梅田にある洲山会長のオフィスはセミナールームにもなっていて、常時たくさんの人が出入りしているので、他人の目が気になって訪問しづらいという雰囲気はない。

気になるのは再生が成功する場合と失敗する場合の比率である。

洲山会長の場合「85%が成功する」と答えられた。末期症状で相談に来られる会社が多いなか、85%は高い数字に思える。だが洲山会長は不満そうな顔。
「本来なら100%の会社が再生可能なのですが、社長が腹をくくっていないと、すぐに予定変更、決定の蒸しかえしがあって再生を断念することになってしまう」
断念した会社も、即・倒産破産ではなく、事業を清算する道や売却する道など、打てる手はすべて打つように指導するそうだ。

あえて再生士の洲山会長に「再生士選びのコツ」をうかがってみた。

どういう仕組みで再生に取り組むのかを聞けば一発で見分けがつきますよ、と洲山会長。

ー聞いてわかるものですか?
ーええ、相談に乗ってアドバイスをしてくれるだけなのか、直接現場にいって実戦的な助言ができるのかを聞けばいい。銀行交渉のやり方を教えるのは当然ですが、そのために必要な書類の作り方まで実務指導するなど、とにかく実践指導するのが私のやり方です
ー社長になりかわって支払い交渉したり、銀行交渉に臨んだりもされるのですか?
ーその通りです。ただ、代理業務は弁護士しかできませんから、私はその手前までです。なかには私を役員に取り立てる会社もあります。
そのときには正々堂々と社長と一緒に銀行交渉に出向きます。それが「タワーリングインフェルノ型」と自称している私のやり方です
ー主演のスティーブ・マックイーン(消防士)が高層ビルの奥深くまで潜入し、火の粉を浴びながらも人命救出に成功するあの映画のイメージですね
ーその通りです。

明日は、洲山会長がどうして事業再生の仕事を始めようと思われたのか、またどのような再生事例があるのかをうかがってみることにしよう。

shuzan-seminar2
★株式会社喜望大地 http://kinkyu-soudan.net/