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グレートゲーム

良い意味で、社長らしい雰囲気というものがある。

それは、服装が立派とか、尊大な態度をしているとか、セルシオに乗っているからではなく、フランクな人柄で作業着を着てカローラに乗っていても伝わってくるものだ。

それは、最終結果責任者として発言内容に腹が据わっていたり、幾つの高いハードルを乗り越えてきた自信から発するオーラであったりする。こうしたものをかもし出すには、ある程度の歳月を要するが、社員に対して経営者意識を植え付けていくにはどれだけの時間がかかるだろうか。

たとえば、

「武沢さん、どうもうちの社員は指示待ち族が多くて、言われたことしかやってくれない。私があれこれ言わなくても、社員の側から経営者意識ある発言や行動を引き出したいのだが、何かよい知恵はないものだろうか。」

などと、問題と同じだ。

仮に、あなたの会社のスタッフに経営者意識が乏しいのであれば、今日をさかいに全社員を役員にしてはどうだろうか。そして、全員に決算書を配布し、全員で経営会議を開催する。ふざけて言っているのではない。私は本気だ。真剣にそのことを考え、社員全員を役員にしたとき、何が好ましくて何が好ましくないかを考えてみよう。そうすると、おのずと打つべき手が浮かび上がってくる。

実際、それに近い手を打ち、瀕死の会社を買い取り、わずか8年で売上高4倍、株式評価額180倍という成果を、解雇者ゼロで実現した会社がある。米国スプリングフィールド・リマニュファクチュアリング社(SRC)であり、社長はジャック・スタックさんという。

たとえば、彼の会社の年次計画は、

・損益計算書
・貸借対照表
・キャッシュフロー計算書
・販売マーケティング計画
・設備投資計画
・棚卸計画
・組織図
・報奨金計画

の八つを作り、発表している。そして全従業員(もちろんパート含む)がこれらの数字や計画の意味を理解できるよう教育している。

経営数字、組織の上下関係、情報の取り扱い、すべてにおいてスタック社長が「ビジネスにおける民主主義」ととらえたこの手法は、社員から経営者意識を引き出すのに最適だと私は思う。彼の手法は、1992年に『グレートゲーム・オブ・ビジネス』という著書にまとめられ、全米に知れわたることとなった。そして10年たった昨年、ようやく日本語訳が発売になった。タイトルは同じで、徳間書店から出ている。大変な好著で、私にも大きな影響を与えている。おいおいこの本の中味から気づいたことをご紹介することになるが、詳しくは同著にゆずることにしよう。

『グレートゲーム・オブ・ビジネス』(日本語版)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4198615330/will43-22