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正解は三つある

「会社のメディア露出を増やせば知名度があがり、業績向上が期待できます」とアドバイスするコンサルタントがいたとする。
おそらく多くの企業ではそれが「正解」だろう。この場合の正解のことを私は『一般解』とよんでいる。数学の微分方程式の言葉だ。

その『一般解』に含まれる個別の事象がある。たとえばこんな事例。

あのセミナー会社の社長はプレスリリースを毎月行っていて連日テレビに出るようになってから一気に売上が伸びました」

『一般解』に含まれるこうした個々の事象を微分方程式では『特殊解』という。わたしたちは、『一般解』を学ぶだけでなく『特殊解』もたくさん学ぶことで自社に置きかえて考えることができるようになる

二流のコンサルタントはごくわずかの『一般解』か『特殊解』だけを根拠に、その武器を後生大事にふりかざそうとする。

一流のコンサルタントともなると、豊富な『一般解』と『特殊解』を蓄えており、聞き手の力量に応じて適切かつタイムリーなアドバイスを与えてくれる。
一流をめざしたいものだが、実は一流がゴールではない。

超一流のコンサルタントともなると『一般解』『特殊解』へのこだわりすら薄くなっていく。なぜなら、もうひとつ別の解答があることを知っているからだ。

微分方程式では、『一般解』だけでは表現できない解が存在する。
それを『特異解』とよんでいるが、会社経営は『特異解』の集積場でもあるのだ。

・一般解 (general solution)
・特殊解 (particular solution)
・特異解 (singular solution)

「一般解」は、ビジネスの原理原則。普遍的な教え。
「特殊解」は、「一般解」の個別の現象。
「特異解」は、「一般解」にはない答え。

「会社のメディア露出を増やせば知名度があがり、業績向上が期待できますよ」というのが『一般解』ならば、あえてメディア露出をせずに業績を伸ばす方策が『特異解』になる。会社によっては、「メディア露出しない」という選択肢が正解になる場合もあるのだ。

芸の修行プロセスを「守」「破」「離」というが、一般解や特殊解から学ぶ段階を「守」という。「破」「離」とは、自分や自社にあった特殊解を見つけ出す段階をいう。

あなたが今求めているのは「一般解」か、それとも「特異解」か。
置かれている状況や自社の内部環境によっても求めるべき解はちがってくる。そのあたりを状況判断する高度な技術、それも経営の醍醐味のひとつといえるだろう。