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おんこ ちしん

あるセミナー会場で四字熟語の「おんこ ちしん」を漢字で書いたところ、「武沢さん、それ誤字ですよね」と指摘された。
指摘者いわく「温古知新」だと言い張る。その場で確認したところ、私が正しいことがわかった。指摘者は私と同世代の方だが、いままでずっと「温古知新」で貫いてきたそうだ。普段はキーボード派の私にとって「おんこちしん」と入力すれば正しく変換する。「温古知新」とは決して変換されないので安心だが、手書き派の人は大変だ。

後日、別のセミナー会場で「おんこちしん」を漢字で書いていただくことにした。正しく書かかれる人が多かったが、一部、こんな間違いをされる方がいた。

・温古知新(やはり、これが一番多い)
・恩古知新(なるほど、恩に着るわけか)
・温故知信(新しく信じ直すらしい)
・温固知新(温めて固めてしまうようだ)
・温故智新(まんざら間違いもなさそうだが答えは一個)

では「温故知新」の意味を書いてくださいとお願いすると、意外にも意味を間違えておられる方が多かった。

古い教えを大切にしつつも新しいものを学ぶことが大切であるという教え
・古いことを知っていながら、新しいことも知っているすごい人の事

という解釈をされる人がいたが、それは間違っている。なかには、

古い人を大切にしながらも若手中心のメンバーに新陳代謝すること
・古い考えにこだわっていたら新しいものを学べないという教訓

などの “迷” 回答もあった。

こんなときはかえって英語訳の方が正しい意味を伝えることがある。温故知新、英語では「visiting old、learn new」という。
ふるくからの教えをたずねて、そこから新しいものを学べ、となる。

『論語・為政』に出てくる孔子の言葉が語源。教師の資格は何かと問われた孔子が次のように述べているのだ。

「故きを温ねて新しきを知らねば、以て師と為るべし」

つまり、古くからある教えに立ち戻って、そこから新しい意味を学びなさいというわけだ。古典や原理原則を学ぶ大切さを説いている。

「visiting old、learn new」、それが本当の「温故知新」。

「visiting old、learn old」、それでは単なる古典フリーク。
「visiting new、learn new」、それでは新しい物好きの根無し草。

ふるくからある教えから、今を生きるための新しい知恵を学ぶのが「温故知新」。あなたの会社でも次の会議や研修で「おんこ ちしん」を出題されてはいかがだろう?