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大好きなパパとママへ

ビジネス文書の基本は「結論から先に」。
こまごました事情説明やデータはその後に付けるもの。ただし、ビジネス以外の場面は逆。結論を最後にもってきた方が効果的な場合が多い。今日はその典型的な例をご紹介したい。やり過ぎとも思える内容だが、効果は充分だろう。

社会人になりたての娘が、初めての東京で下宿生活を開始。電話もメールも寄こさなかったが、夏休み直前の7月になってようやく親にこんな手紙を送ってきた。(文面はフィクション)

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大好きなパパとママへ

初めて東京に来て、いろんなことがありすぎてメールできなくてゴメンなさい。ようやく落ちついたので、まとめてご報告します。読む前に、ちゃんとソファに腰かけて。きちんと座るまでは1行も読まないでほしいの、いい、わかった?

こちらはいたって順調です。勤務先のお店に通いだしてふた月目の朝、お店のシャッターに貼り紙がしてあったの。「閉店」と書いてあったわ。社長家族は夜中にどこかへ行ったみたい。結局、給料はもらえずじまいで、働くところもなくなったの。
しょんぼりしてお店の近くを歩いていたら、赤信号に気づかずバイクに跳ねられたみたい。入院先の先生が言うには「幸い、軽い頭蓋骨骨折なので、ひと月もしたら元気に働けるでしょう」だって。ようやく退院できて、その夜ハンバーガーショップに行ったの。すると、優しそうなお兄さんが話しかけてくれたわ。その人に連れられて繁華街のビルにあるお店に入っていったら、私と同世代の人たちがたくさん働いていたわ。
一日30,000円にもなるというから、その日からそこで働くことにしたの。お客さんはみんな男性で、とても優しくしてくれるわ。ときどき恐い感じの人もいるけど、黒い服をきたお兄さんを呼べば、外へ追い出してくれるから平気。連絡先を交換する友だちもたくさんできて、中には高級車で私のマンションまで送り届けてくれる老紳士もいるのよ。背の高い外国人男性とも友だちになれたし、朝まで泊めてあげる親友も何人かできたわ。東京って恐い街だって勝手に想像していたけど、全然違っていたわ。あ、そうそう、お腹にできた赤ちゃんは元気だよ。パパもママも初孫を楽しみにしてるって言ってたものね。ただ、父親だと思っていた男性がみんな連絡がつかなくなったのには驚いたわ。近況報告はおしまい。

でも安心して。勤務先はつぶれてないし、事故も入院も転職も妊娠もしてないの。ただ、洋服を買いすぎてお店のツケが10万円溜まってるのはほんとよ。今週中に助けてほしいな。

パパとママへ愛をこめて、〇〇より。

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親の脛をかじる10万円がどれだけ軽いことかを強調するには充分すぎる前フリだろう。「結論から先に」はビジネス文書の鉄則だが、ビジネス以外では結論は最後にが効果的。だが、実際にこんな衝撃的な手紙を親に送らないでほしい。最後まで読み終えるまでに体調異変を起こしかねないから。

この手紙、『影響力の武器』(ロバート・チャルディーニ著)に出てくるものを日本風にかなりアレンジさせていただいた。

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