※今日はご本人の許可をいただき、すごい実話をご紹介する。二回または三回に分けてお届けすることになりそうだ。
今年2月、不安いっぱいで「大阪経営計画合宿」に参加されたのは堀口こみちさん。株式会社こころの若き女性社長だ。実は、直前になるまで合宿参加を迷っておられたという。
何人かの女性スタッフを雇用し、ネットでぬいぐるみの販売と補修の仕事をされている。徐々に仕事も軌道に乗ってきたところなので、社長が二日間も合宿に行っていて会社は回るのか、という不安。それに「経営に詳しくないので合宿についていけるかどうか」という不安。だけど、合宿に参加せねば解決できそうもないもっと大きな不安が堀口社長にはあった。
「どんなことですか?」と私が尋ねると、
「今のやり方で本当に大丈夫なのだ」という確かな自信が欲しいということだった。ぬいぐるみが大好きな堀口さんが運営する「フモフモランド」というネットショップには全国からファンが集まる。ハマると抜けられない不思議な世界があると堀口社長。そのあたりの世界観はあとでじっくりうかがうことにして、まずは不安の元凶である数字を確認することにした。
経営数字の見方を解説したあと、実際の数字を Excel に入れてもらった。悪くない。立派なものである。高収益というほどではないが、きちんと利益がでている。心配だという借入金も許容範囲内だし、今の調子でがんばっていけば自己資金が毎月増える構造ができそうだ。その結果、〇年後には無借金経営が実現できることもわかった。
「この傾向で良いとわかり、すごく安心しました」と堀口社長は笑った。
数字計画を完成させると、次に「経営理念」をつくる時間になった。
どんなお考えで今の仕事を創業し、毎日どんな気持ちで仕事をされているのですか?という私の問いに、堀口社長は切々と言葉を紡ぎだした。
それは、ぬいぐるみへの愛情、ぬいぐるみの持ち主への愛情、スタッフに対する熱い思いなどを10分ほども語ってくれただろうか。だが、なかなか経営理念らしいキーワードが出てこない。私がご用意した「理念策定シート」に書き込み作業をしてもらうことにした。
「ふ~、理念を作るのってむずかしいですね」と堀口社長。
私は励ました。「むずかしく考えてはいけませんよ。セールのキャッチコピーを考えるのと同じ要領ですよ。産みの苦しみだと思いましょう。産まれたあとは喜びしかない」
「がんばります」
発想を思いきり飛躍させることで最高の理念が生まれることがある。ちょうど、「がんばれ!社長」という7文字の言葉を自社の理念にし、社名にまでした10数年前の私のように。それは、堀口さんの会社が経営理念を「がんばれ!ぬいぐるみ」にするぐらいの発想の飛躍でしたよ、と私。
そこで一瞬間があった。
堀口社長が喜色を浮かべている。
「それいいですね、『がんばれ!ぬいぐるみ』。すごく奥が深くて、いい言葉です。いただいちゃっていいですか?」
こうして「がんばれ!ぬいぐるみ」は株式会社こころの経営理念になった。
二日目は朝食のあと、「顧客創造計画」をつくる時間が待っていた。今後、何に力をいれて業績を伸ばしていくかを考える。そこで堀口社長から意外な言葉が飛びだした。
「最近は病院への引き合いが増えているのですよ」
「え、病院もやってるのですか?」
「はい、私は病院の理事長です。院長は『盛富小路けろーにょ』という者がやっています」
私は自分が二日酔いなのかと疑った。
「もふのこーじ、ですか?」
「はい、けろーにょ院長です」
堀口社長は真顔である。
「ぬいぐるみの病院」であると気づくのに2~3分かかった。
<月曜日号につづく>
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