「こんな重いものを担いで歩けるわけないじゃん」リュックサックを計ってみたら13キロもあった。ようやくの思いで、9キロに減らしてようやく立山縦走の旅に出た。42歳のときだった。結局、それでもバテた。10キロ前後のザックを背負って歩くつらさはいまでも身体が覚えている。
だから、20歳前後の女性が15~18キロの荷物を背負って数時間も階段を上り下りすると聞いて呆気にとられた。それが野球場でのビール売りの仕事である。通称「売り子さん」はいま、女性に人気のアルバイトで、大学生が多いようだ。
タレントの「おのののか」さんがかつて東京ドームでビール売りの仕事をしていた。その様子をあるスポーツ記者がみつけ、「美人すぎる売り子」と報じたことから彼女は芸能界入りのきっかけをつかんだ。彼女の場合、単に美貌を売り物にしたのではない。美貌だけなら負けず劣らずという売り子が山ほどいる。彼女が凄かったのは販売力だった。
彼女は1日400杯売っていたという伝説的記録があるのだ。初心者の場合で50杯から80杯。一人前になると平均的に100杯は売る。各球場にいるトップの売り子になると200~300杯は売る。そんななかで400杯売っていたわけだから彼女の凄さがわかる。
私もよく野球場に足を運ぶ。ビールは必ず飲むので売り子の動きは気にしている。あの子はできるな、と思う売り子は動きや目配り、動線などにまったく無駄がない。あんな子がうちの会社にいてくれたらな、と思うこともしばしばである。最近ではどの野球場も売り子の採用に力を入れ、売り子は「球場の華」と化している。年齢はおおむね高校1年生から25歳までと定めているところが多いようだ。
先般、「がんばれ!社長」の企画で野球チケットに当選された山形の男性が奥様と東京ドームに行ってこられたそうだ。さっそく御礼のメールを頂戴したのだが、ビールの売り子に関することが書かれていたのでご紹介したい。
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2月27日の夜に東京ドームで妻と野球観戦をしてまいりました。外野席は満席でしたが、内野指定席でしたので、ゆっくり観戦することができました。プロ野球観戦は初めての妻に、ホームランや「ビールの売り子達」の実際の動きを見せることも出来ましたし、巨人も勝って気分良くホテルに帰った次第でございます。ありがとうございました。
ところで、私たち夫婦には、ビールの売り子にまつわるこんな思い出があります。昨年12月のことです。東京デズニーランドで順番待ちをしていた私たち夫婦の前に、かわいい女性13人と、お父さんのような男性1人のグループがいました。どの女性も美人というか、かわいい子揃いで、あちこちの若い男性がその存在に気づき、迷路のように回廊する順番待ちの列の中で近くに来ると彼らが大興奮して盛り上がっていました。
高校生のような娘もいれば、社会人のような女性もいて、不思議な一団でした。「大学生のグループかな?」「大学生にしては引率の先生がいるのはおかしいよ」「でも高校生にも見えないしね。どうみても社会人としか思えない娘さんがいるもの」そうした話をしていると、一時間以上におよぶ行列が気にならなくなっていきました。引率の男性がリュックに沢山入っていたお菓子を彼女たちに配ったり、写真をパチパチ撮ってあげたり、彼女たちに話しかけたりと、どう見ても気づかってあげている様子。
いよいよアトラクションの入り口が近づいてきました。美人集団とお別れになるので、私は思い切って引率の男性に話しかけました。
「引率の先生ですか?」
すると、男性は先生ではなくマネジャーだと教えてくれました。女性たちは野球場でビールを販売する売り子さん達だったのです。東京ディズニーランドに来たのは、優秀成績者を慰労するご褒美旅行だったというわけです。
そういえば以前、テレビでビールの売り子たちの戦略を特集する番組がありました。「ビールを売るのにこんなにかわいい子ばかりを選んでるの!」と妻もその番組をみてびっくりしていましたが、まさしくその通りでした。マネジャーに聞いてみると、「内緒ですが、顔は選ぶ」とのことでした。そんなことも思いだし、東京ドームで実際に彼女たちの働きぶりを観察できて、妻もひどく喜んでいました。
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東洋経済オンラインのこちらの記事にビールの売り子の戦略と仕事術が書かれている。ご一読あれ。
→ http://toyokeizai.net/articles/-/69901
また、京セラドームではビールの売り子をスマホで呼び出すことができる。
→ http://cloud.watch.impress.co.jp/docs/news/20140825_663365.html
あなたも球場に足を運ぶことがあれば、試合内容もさることなが非「球場の華」たちの仕事ぶりも観察してみてほしい。