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黒田節とトキノミノル

「酒は飲め飲め 飲むならば 日の本一のこの槍を・・・」

子どものころ、正月などに親戚が集まると、母の父が酔興で「黒田節」を舞ってくれた。若いころに日本舞踊もやっておられたそうで、酔ってご機嫌な顔をしながらも、背筋がシャンとし、切れのある見事な舞いだった。

今でも福岡県の民謡として歌い継がれる「黒田節」は、福岡・黒田藩の藩の歌。どうしてこの歌詞が生まれたのだろうか。それには藩祖・黒田長政から福島正則にあてた使者・母里太兵衛のこんな武勇伝があった。
http://www.geocities.jp/josui_fuji/kurodabusi.html

2014年に NHK 大河ドラマになった『黒田官兵衛』は当然ながら官兵衛が主人公の物語だが、戦国争乱を生きぬいた父・黒田職隆(柴田恭兵)→黒田官兵衛(岡田准一)→子・黒田長政(松坂桃李)の3代記でもあった。この『黒田官兵衛』の後半で関ヶ原の合戦があり、そこで大いに働いた官兵衛の息子・長政が家康に認められ、福岡藩をまかせられることになる。それが黒田節につながっていき、今も我々が口ずさんでいるわけだから歴史は今につながっている。

だから歴史の興味は尽きることがない。その興味深さとまったく同じ理由で競馬好きになる人も多い。歴史と競馬? 疑問に思われるかもしれないが、競馬の魅力は歴史の魅力でもある。

親から子へ、子から孫へ。受けつがれる血筋を通して、子の走りに親を思い出し、親が果たし得なかった夢を子孫に託す。そんな血統ロマンがたまらなく大好きだという人が競馬ファンのなかに多いのだ。

だが、血統を残すことが許されず、一代かぎりの人生(馬生)で人々に記憶だけを残して去っていった競走馬も多い。幻の馬といわれた「トキノミノル」はそのなかにあっても特別な存在だろう。

じつは昨日、東京競馬場で「共同通信杯」(3歳・GIII)というレースが行われた。このレースは「トキノミノル記念」ともいわれている。実在した競走馬の名が重賞レースに使用されているのはトキノミノルを含めて8頭しかいない。それほど競馬界にあっても特別な一頭なのだ。

1948年(昭和23年)に生まれて10戦10勝、うちレコード優勝7回という成績。けたはずれに強かった。「日本ダービー」で優勝し10連勝を達成。クラシックレースで2勝し、秋の菊花賞で夢の三冠達成の期待がかかったが、日本ダービーの17日後に破傷風で急死した。戦後の中央競馬で10走以上した馬で、全勝を記録しているのはトキノミノルだけである。

それに競走馬が映画になることはめずらしい。

海外では『セクレタリアト/奇跡のサラブレッド』や『シービスケット』などがあるが、世界でも稀なことである。日本では若尾文子主演の『幻の馬』一本しかなく、それがトキノミノルの映画なのだ。

血を残すか、生き様を残すか、作品を残すか。「トキノミノル」、もちろん現役のころの走りを私は知らない。だが、このウィキペディアの記事を読んでいたく感動した。

トキノミノル
http://e-comon.co.jp/pv.php?lid=4616