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続・北条建機の未来戦略

昨日で締め切った「北条建機の未来戦略」について、34人からご意見を頂戴した。そのうち15人ぐらいの方のご意見はかなりの説得力があり、本当はその 15人すべてを掲載し、マンダラ手帳をプレゼントしたいほどである。だが、予算の関係でなくなく後述の 5人のご意見に絞らせていただいた。

まず北条建機(仮名)の経営会議に出された未来戦略案は次の 6つであった。

1.今こそ「顧客第一主義」の経営理念に立ち返り、本格的なカスタマーサービスの向上策を計るべし。そのために必要なことは、全社をあげた経営理念教育にあ
る(人事部長案)

2.シェア縮小に手をこまねいてばかりいるのではなく、こちらかも積極的にアジア諸国に進出してシェア拡大を計るべきだろう。それには「Made in Japan の
北条」「70年の実績の北条」をブランディングすれば充分に勝ち目はある。(資材部長案)

3.我が社も中国製や韓国製に負けない低価格機の市場に参入していこう。低価格化のトレンドは止まりそうもない。仮に価格を 3割引き下げてもコストをそれ以
上引き下げれば利益率は高まるはずである。
(営業本部長案)

4.新製品、新事業に活路を見いだそう。建機の市場規模はこれからも成長が見込めるが、当社のような中堅企業が大手資本と同じ市場でまともに勝負しても勝ち
目がない。よりニッチな市場の新製品や新事業を開発し、無競争の事業を作っていこう。(常務案)

5.国内外に目を向けて企業買収を行おう。我が社の弱み、それは海外での営業力と商品構成の乏しさである。それを補強してくれる強力なパートナー企業を買収
すべきだろう。(専務案)

6.今こそネットに投資し、顧客第一主義という理念を具体的な形でサービスにしよう。北条しかやっていないという顧客サービスを開発することによって、もと
もとしっかりしている製品力にプラスアルファの付加価値を付け、他社との差別化を計っていこう。(財務部長案)

あなたはどの案を支持するか、回答結果は次のようになった。

1の理念教育プラン・・・・・13通(1位)
2のアジア進出プラン・・・・・4通(4位)
3の低価格機投入プラン・・・・1通(5位)
4のニッチ開発プラン・・・・・9通(2位)
5の企業買収プラン・・・・・・1通(5位)
6のネットで差別化プラン・・・6通(3位)

「がんばれ!社長」読者らしい傾向だ。何をさておき、原点(理念)に立ち返っておくべきだろうということで 1番が一番人気。
次が4、そして 6となり、3と 5は辛うじて一票ずつ獲得した。私の意見は最後にして、まずはお寄せいただいた中から興味深いご意見を紹介してみたい。(手帳プレゼント意見)

まず、Excel ファイルを添付して意見を寄せられた加藤さんは視点が独特で面白かった。六つの意見を項目別で評価している。

“【合目的性】経営理念(顧客第一主義)に照らしてどうか?”
“【実現性】実現可能性はどうか?資金・人財・ノウハウ・等の制約”
“【将来性】時代の流れに乗っているか?”
“【収益性】コストパーフォーマンスは?”
“【効率性】経営資源の使われ方が効率的か?”
“【迅速性】実現までのスピード感”
“【拡張性】他分野への波及効果は?人材面、ノウハウ面、等々で”
“【成長性】市場・ビジネスの成長性?”
“【安全性】リスクは無いか?”
それらの総合得点が最も高かったのが「1」であると自説を述べておられるわけだが、結論は私と違うが、アプローチは参考になった。従って手帳一冊。

消去法で結論を導く方も多かったが、中でも須賀さんの意見はやや辛口で独善的なところがあるものの、痛快な文章であり、なおかつ結論が私と同じであったことから手帳一冊のご意見とする。

・・・
1の理念教育の徹底について

→いまどき「顧客第一主義」でない会社などそもそも市場で生き残れない。このようなスローガン的お題目で生き残れるほど市場は甘くない。現場を知らないスタッフ部門の抽象的提案でありダメ

2のアジア進出について

→既存商品で新市場に打って出るのは、マーケテング上は良いと思いますが、アジアとなるとよく調査しないと返り討ちに合います。日本と競争のレベルが違います。

3の低価格機開発について

→低価格戦略は、正しいように見えるが「小型建機」という商品特性上、低価格戦略は、数量を売って行かない限りさらに収益を悪化させるので慎重に判断すべき

4のニッチ開発について

→これは、6の後に取る戦略として正しい。
中小企業メーカーがとる戦略としては、王道です。

5の企業買収について

→一つの選択として検討してもよいが現状では、やめた方が良い。
事業の方向性を同じくする人材とトップのリーダーシップがないと成功は、おぼつかない。

6のネットで差別化するについて

→こうしたソリューションを深堀していく戦略を優先すべき。
2代目としてやるべきことは、今のブランド力を生かして自社のブランドにいかに付加価値を上げていくかに注力すべき。
サービスのブラッシュアップなら、投資もかからず何より社員のアイデアを生かしやすい。顧客の声を商品に生かしてから新分野や海外展開を視野に入れるべき。

「選択肢は一つだけとは限らない」というご意見も複数あったが、その中で、実際に中国(東莞市)でビジネスコンサルタントをされている林さんの意見は、現場の実情に即していて興味深い。(手帳贈呈意見)

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どう考えても国内市場は頭打ちであり,パイの奪い合いをしていては,ますます収益性は落ちて行きそうです.こういう状況で,廉価製品を投入するともっと苦しくなりそうです.
ジリ貧の状況を考えると,M&Aを仕掛けた場合,ますます資金が苦しくなりそうです.
アジアに進出し新しい市場に出ようとしても,アジア市場では中古建機が主力であり,ますます収益性が悪化しそうです.
一筋縄では解決出来ない問題と思います.
しかし経営リソースは限られているので複数の戦略を選択することも難しい.
以上の観点で,6つのアイディアを見ると,1以外は額の違いはあれど,投資が必要です.
と言うことは,1と2~6の内一つを組み合わせることができそうです.
1は発案者の人事部長をリーダとし,若手社員でチームを作り,経営理念の社内浸透,損益分岐点を下げるための体質強化プロジェクトを始める.
そして2を推進します.
戦術としては,中古建機(他社製を含む)の下取りキャンペーンで,拡販します.買い取った中古建機を,アジア市場にもうけた販売・サービス拠点から販売する.
他社中古製品も販売しますが,損失が出ない程度の価格で売り切り販売.自社中古製品は,アフターサービスなどで付加価値を付けて,自社ブランドのアジアでの認知に役立てます.(後に新車市場が大きくなって来た時のために)
1と2を選択するのは,出題意図からすると反則かもしれませんが(笑)
経営は択一問題の様に単純ではないでしょう.
1と2を推進して余力を作り,新規サービスまたはニッチ市場に向けた新製品の開発に資金を回せば良いと思います.
・・・

少数意見の「3」に投票された瀧本さんの意見も面白い。
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北条建機の現状を少し整理してみました。
【強み】
1.「小型の北条」ブランド
2.かつては営業利益率15%
3.「顧客第一主義」の経営理念
4.建機の市場規模はこれからも成長が見込まれる
5.もともとしっかりしている製品力
【弱み】
1.長引く景気低迷と外国勢の低価格攻勢
2.1.に対抗して値引き(?)し、営業利益率が2%程度に悪化
3.低価格化のトレンドは止まりそうもない
4.海外での営業力は弱い
5.商品構成が乏しい

以上、市場の低価格化により弱みが顕在化していると考えられるので、強みを維持したまま、唯一コスト引き下げという対策を打ち出している「3」が最も有効な対策ではないかと思いました。
低価格に耐えられる建機ならば、ブランドの強みを生かした海外拡販も近い将来に可能となると思います。
それにしても、北条建機の役員の皆さん、年齢が高いにもかかわらず経験則に縛られない意欲的な戦略を出しておられ、それを見ただけでも「北条建機」の未来は明るいものであろうと推察いたしました。

近藤さんの案も良かった。
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私は「4.新製品、新事業に活路を見いだそう。」を選びます。
北国の雪かき、高所での作業、集中豪雨の土嚢積み、夜間照明などと様々な現場がありますが、全ての現場で共通しているニーズは「すばやい対応」です。
また様々なニーズに対応できる「多機能性」をもたせることができれば、当該車両の稼働率は非常に高くなります。
最後に高い耐久性とメンテナンス性、そしてリーゾナブルな価格は、小型建設機械製造で培ったノウハウを活用すれば実現可能でしょう。
そしてネットやGPSを使って空いて(遊んで)いる車両を必要な現場に回すようなサービスを行えば、更に喜ばれることと思います。
※警備保障会社と組めば割りと簡単に実現できるような気がします。
緊急時にはボランティア活動も可能です。
このビジネスモデルが日本で成功すれば、海外ででも展開できるのでは?
なかなかおもしろい作業車とニュービジネスができるように思いますが如何でしょうか。
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その他、大屋さん、平子さんなど、手帳プレゼントに匹敵するほど遜色ないご意見だが、今回は次点とさせていただく。

なお、私の意見は「6」である。その理由については紙面が足りないので月曜日号で書いてみたい。

【編集後記】

◆名古屋駅でどうしてこんなに外国人が多いのかと思っていたら、サッカーだったのですね。豊田市で昨夜、クラブワールドカップの準決勝があったわけですが、さすが国際的なスポーツだと知らされました。