●日馬富士(はるまふじ)の全勝優勝で幕をとじた名古屋場所。
優勝杯と優勝旗を授与したあとのインタビューで「これからも夢と希望を与える相撲をとりたい」、「後援会、親方、おかみさん、ファンの皆さまのおかげ」と感動的なコメントで館内から万雷の拍手をあつめていた。来場所に綱取りがかかるが、白鵬とのダブル横綱を是非とも実現してもらいたいし、日本人力士の奮起をお願いしたいものである。
●白鵬より日馬富士のほうがやや先輩にあたるそうで、入門当時、ふたりはなけなしの千円札を握りしめて錦糸町の焼き肉屋に行き、一人前の焼肉を二人で分けあった仲だという。一人前で 7枚の肉があり、先輩の日馬富士が4枚、後輩の白鵬が3枚を食べた。(今朝の中日スポーツ一面より)
●今場所、私は名古屋市西区にある伊勢ノ海部屋を訪問した。
この部屋の頭は「勢」(いきおい)という幕内力士で、引率してくれた相撲好きの若い女性ガイドさん曰く「いきおいクン」。
「いかにも今風の四股名(しこな)ですね」と彼女にいうと、「いえいえ」という。「勢」は江戸時代から続く由緒ある四股名なのだそうだ。
●四股名は部屋の伝統的な四股名を考慮にいれつつも、親方が本人をみて決めるらしい。本人が力をつけて出世すると後援会やスポンサーなどの意向で四股名が変わることも多い。
●代表的な四股名といえば江戸時代に一世を風靡した谷風梶之助や雷電為右衛門、小野川喜三郎など、勇ましさや優雅さを強調したものが主流である。その結果、「山」「川」「花」「海」といった文字が盛り込まれるようになり、それは今にも続く傾向である。
●だが近年、外国出身力士が急増して四股名もバラエティ豊かになった。そのせいかどうか、こんなエピソードがある。
トンガ王国出身の「南ノ島」(みなみのしま)という力士がかつていた。親方がかなり安易につけた四股名(しこな)のようだ。ようやく本場所の一番で勝った。行事から勝ち名乗りを受ける際、行司が四股名を忘れてしまい、せっぱつまって「トンガ~」と勝ち名乗りを与えた。
●名は体を表すというが、いかにも強そうな四股名がある。
(参考:ウィキペディア)
・谷風 梶之助(たにかぜ かじのすけ)
・雷電 為右衛門(らいでん ためえもん)
・稲妻 雷五郎(いなづま らいごろう)
・鳳凰 倶往(ほうおう ともみち)
・大魔王 暁志(だいまおう さとし)
・猛虎浪 栄(もうこなみ さかえ)
・大麒麟 將能(だいきりん たかよし)
・武蔵丸 光洋(むさしまる みつひろ)
・武蔵坊 弁慶(むさしぼう べんけい)
・荒馬強 強(あらうまごう つよし)
こんな名前を聞かされたら、できれば顔を合わせたくない。
●その反対に、いかにも弱そうな四股名にするケースもある。相手の闘志をかわそうという作戦だろうか?
・白旗 源治(しろはた げんじ)
・不了簡 綾丸(ふりょうけん あやまる)
・膃肭臍 市作(おっとせい いちさく)
・蟻ノ子 藤太郎(ありのこ とうたろう)
・三毛猫 泣太郎(みけねこ なきたろう)
・山猫 三毛蔵(やまねこ みけぞう)
・玉猫 三毛蔵(たまねこ みけぞう)
・小猫 三毛蔵(こねこ みけぞう)
・改心 政太郎(かいしん せいたろう)
・凸凹 太吉(でこぼこ たきち)
・おだやか 常吉(おだやか つねきち)
・野晒 勘三郎(のざらし かんざぶろう)
・唐辛子 多喜弥(とうがらし たきや)
・〆切り 玉太郎(しめきり たまたろう)
・豆鉄砲 芳太郎(まめでっぽう よしたろう)
・馬鹿の 勇介(ばかの ゆうすけ)
ここまでいくと、付けられた力士も気の毒な気がする。
●とにかく目立ったもの勝ちを狙い、こんな風変わりな四股名を付けられた力士もいる。
・九 九之助(いちじく きゅうのすけ)
・い 助治郎(かながしら すけじろう)
・一二三山 四五六(ひふみやま よごろく)
・三ッ△ 鶴吉(みつうろこ つるきち)
・相引 森右衛門(あいびき もりえもん)
・兎角 是非内(とかく ぜひない)
・忍山 色助(しのぶやま いろすけ)
・縄張 綱右衛門(なわはり つなえもん)
・横巾 楯之助(よこはば たてのすけ)
・晴天 照蔵(せいてん てるぞう)
・螺貝 鳴平(ほらがい なるへい)
・宝年 万作(ほうねん まんさく)
・猪シ 鍋吉(いのしし なべきち)
・電気燈 光之介(でんきとう こうのすけ)
・自動車 早太郎(じどうしゃ はやたろう)
・自転車 早吉(じてんしゃ はやきち)
・文明 開化(ぶんめい かいか)
・新刑法 源七(しんけいほう げんしち)
・丸勇 高利(まるゆう たかとし)
・右肩上り 博保(みぎかたあがり ひろやす)
●四股名ならぬ源氏名、芸名、ペンネーム、ビジネスネーム、あなたならどんな名前を自分に付けたいだろう。