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時代小説

●先週末、滋賀県でセミナーを行った。懇親会は彦根駅前の居酒屋で、滋賀名物の近江牛、鮒寿司、赤こんにゃく、鮎などを頂戴した。
翌日は朝から T さんの車で彦根城、安土城趾を回った。琵琶湖にほど近いこのあたりは、美濃、尾張、三河、越後、甲斐など、京を目指すどの武将も、必ずここを通る交通の要衝。

●今は干拓されて琵琶湖から離れたところにある安土山。戦国の世には、ここは琵琶湖に面していたという。その山頂に、武装設備を一切もたない天守閣をいただき、天下統一の象徴として偉容をほこった安土城。

●だが築城後、わずか三年にして消失してしまった。消失理由は諸説ふんぷんだが、当時の天守閣を再現した記念館が近くにある。絶頂期の信長を肌で感じることができる数少ない場所のひとつといえそうだ。
信長が家康をもてなしたときの饗応料理も記念館で再現されており、信長ファンはもちろん、戦国ファンは一度は見ておきたいものである。
JR 安土駅から車で10分ほどである。

●「T さん、まだなの?」
悲鳴を上げそうになった。登れども、登れども、安土の天守閣跡に着かない。「こんな大変なところに信長はどうやって登っていたのだろう?自分の足で?、それとも馬か駕籠?」

●そんなグチをこぼしながらも30分後には山頂の天守閣跡に着いた。
ここから見おろすパノラマの絶景は、まさしく信長も見たものに相違なかろう。感無量。用意の良い旅人はここにレジャーシートを敷いて弁当を取っていた。

●「T さん、ありがとう!」
近江八幡駅で解散し、名古屋に戻る。私はまっさきに駅構内にある書店に向かった。お目当ては信長の本。無性に信長が読みたくなったのだ。私にとっての信長は、司馬遼太郎の『国盗り物語』である。他の作者の信長も読んではみたいが、ここは順当に『国盗り物語』を買っておくことにした。

●文庫本コーナーに行って驚いた。佐伯泰英コーナーがグーンと拡充しているではないか。しかも、新しいシリーズが始まったようだ。帯をみると、「私にとってこれが最後のシリーズになる」と著者。前立腺がんと戦いながら毎月一本のペースで時代小説を書き続ける佐伯。
いままで一度も読んでいないし、あまり読みたいと思ったことがないが、命を削りながら書き続ける様は尋常ではない。『国盗り物語』ともう一冊、佐伯の本も読んでみようと思った。

<あすにつづく>

●武沢セミナーのお知らせ

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