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栄枯盛衰の中で生きぬく

●「何を売っていいのか分からない」

売り場からそんな困惑の声が聞こえてくる店だった。
15年前、パソコンにウィンドウズが搭載され、誰もがインターネットにつながるようになった。この地方商店街(電気街)には夢のあるそんなパソコンを求めて若者が群がり集まった。週末などは満員電車に乗っているのかと錯覚するほど混み合った。

●ゲーム人気も追い打ちをかけた。任天堂やソニーのゲーム機やゲームソフトが売れまくっていた。だからこのエリア一帯は若者や子供にとって夢のワンダーランドだった。

●あれから15年、昨日同じ場所に行ってみた。

そこには「ジャンクノート」と書かれたノートパソコン(大手メーカー製)が数千円で売られていたが誰も見向きもしない。店員の目はうつろで私をみても何も反応しない。午後7時半、閉店間際なのだろうか、BGM が聞こえてこない。「激安」「最安保証」と書かれたシャープ製亀山ブランドの液晶 TV から聞こえる AKB48 の『ヘビーローテーション』が空々しい。

おもわず芭蕉の一句が思い浮かぶ。

夏草や つわものどもが 夢のあと

●ブームや流行は移ろい行くが、お店はそれに対応しなければならない。隆盛を誇ったころはあんなに元気だったこの商店街に元気を取り戻さねばならない。それがビジネスというものだ。

「がんばれ!この商店街」と思いながら次の用事のためにタクシーを拾った。

●車内で iPad を開き、日経の夕刊をチェックする。すると、まさしくこの商店街のリーダーに読んでもらいたい記事を発見!

それはこんな記事だった。

『ゲーム施設、シニア誘う』
運営大手、昼間の集客に知恵  50歳以上に説明会、ベンチに畳とある。

●以下、日本経済新聞の記事を抜粋するとこうなる。

・・・
ゲーム施設運営大手が中高年向けのサービスを拡充している。来店客が少ない昼間の時間帯の集客強化が狙い。カプコンがシニア向けにゲーム機器の遊び方講座を開くほか、ナムコもシニア専用のマッサージチェアの設置を始めた。少子化でゲーム市場が縮小しており、ゲームに関心を示すシニア層の取り込みで利益を底上げする。

カプコンは自社ゲーム施設の全国20店で、50歳以上を対象にメダルゲーム機などが体験できる説明会を始めた。シニア世代の昼間の交流の場としてにぎわっており「説明会をきっかけに子どもや孫と一緒の来店につなげたい」(同社)という。

タイトーは全国約20店に畳を使ったベンチを設置。お茶の無料提供も始めた。台が低く、小さい子どもと一緒に遊べるメダルゲーム機も開発中だ。

各社は中高年を中心とする昼間の来店増で時間帯別の客足が平準化。
店員の効率配置がしやすくなりコスト削減が進んでいる。カプコンのゲーム施設事業は 2012年 3月期の営業利益が 17億円と前の期比 5割程度増えたようだ。バンナムHDとスクエニHDの前期のゲーム施設関連事業の営業利益もそれぞれ12%、15%増えたとみられる。
・・・

●ゲーム業界のこの対応力は見事なものだ。

少子化の影響やオンラインゲームの人気でゲーム機やゲームソフトを買ったり、ゲームセンターで遊ぶおこづかいが奪われている。
だったら、急拡大しているシニアマーケットを対象にしようという発想。実にしたたかというか、これがビジネスの基本姿勢だと思う。

●今の場所で今のビジネスをやらなければならない、という縛りはどこにもない。どの場所でどんなビジネスをやっても良いから利益を上げる、それが経営者の仕事なのだ。

繁盛店ばかりに目が行きがちだが、閑散とした商店街やお店に行ってみると逆に奮起する気持ちが高まるかもしれない。まずは売る側の姿勢や気概が大事だと痛感するはずだ。

台風のような春の嵐に吹かれつつ、そんな思いにふけりながら自分のバースデーケーキを買いに向かった。

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