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芸風を変えてみよう

「お前、バカじゃないか。材料を全部買い占めるチャンスがありながら半分しか買わないなんて。今だ!という時に大胆に行動できないようじゃ大した経営者になれないぞ。」とH社長。

「そうでしたね。でも、あのとき無理してたらその後の資金が心配でしたし。」と弁明するT社長。

「資金が心配なら銀行から金を借りておけば良いじゃないか。あのとき借入枠が余ってたんだろう?」
「ええ、一応。」

これは、一泊二日の「マネジメントゲーム」研修会のひとこま。初日の研修を終え、入浴後の缶ビール反省会でのやりとりだ。3/15、16の土日を利用して9名の参加者で開催したもの。

言われっぱなしのT社長は、悔しくて悔しくて眠りにつけず、部屋に戻ってもベッドの上でノートに秘策を書きつづったという。たしかに初日の10時間程度では、参加者それぞれがゲームのルール理解や、決算の仕組み理解などに必死だ。そんなに経営能力の格差がつかない。ところが、二日目になると、それぞれが秘策を胸に意思決定していく。一気に差が出るのだ。

昨夜、弁明に忙しかったT社長も自らの経営スタイルを変えた。市場環境が好況だし、積極路線に勝機ありと判断したのだ。そして並みいる古参経営者や経営コンサルタントを尻目にT社長が優勝した。しかも、売上の半分が経常利益になるという超高収益企業をつくりあげ、ぶっちぎりの優勝なのだ。

(若きT社長の顔は、「画像日記」で今夕、公開予定)
画像日記 http://www.e-comon.co.jp/gazoudiary/index.htm

売りたい人よりも買いたい人の方が多いと物価が上がっていく。逆だと下がっていく。経済が好調の時代には、どんどんと作ったものが売れていく。製造と販売の生産性が高まり、多少の高コスト体質も関係なく利益が出る。ちまちまとした堅実経営をやっている経営者が無能ではないかと疑われる。

経済が不調になり、ものがなかなか売れなくなると、コスト体質の悪さが目につき、リストラせざるを得ない。大切なのは、長期的に発展していくことである。追い風が吹けば、諸手に帆を揚げて気持ちよく前進する。向かい風が吹けば、帆をたくみに操作して前へ進むし、嵐になれば港で停泊することもあるだろう。環境にあわせた手を打てる能力が問われる。ワンパターンの経営スタイルではいけない。そうした意味で、経営とは「環境適応業」である。

しかし風や嵐のような自然環境ならば“適応する”しかないが、経済環境や市場環境というものは人為的な部分が多い。だから、環境をつくるのも経営者の役目だと、という強い気構えがいる。つまり、経営とは「環境創造業」でもあるのだ。

大切なのは、臨機応変に適切な手が打てることだ。

T社長のように、「好況期だから積極経営に勝機あり」と見抜いたら諸手に帆を揚げることだ。帆をたたんだままの経営をしていては、堅実さはあっても成長することができない。

帆を揚げるとは、リスクを抱えることをいう。あえて経営バランスをくずすことでもある。銀行からお金を借りること、設備投資すること、求人すること、広告宣伝すること、研究開発すること、すべてがリスクだ。リスクと利益は不即不離の関係にあるのだ。

「銀行さんに儲けさせるのはシャクだから、ぼくは金は借りません。あくまで自前の資金でビジネスします。」と初日に断言していたM社長も、二日目朝には、「芸風を変える」宣言をした。

実際の経営スタイルをそのままゲームに持ち込んだのだが、うまく通用しない。そこで二日目には、自分とは正反対のスタイルをもつ著名な経営者になりきってみた。その結果、M社長も配当できる企業にまで成長させることができた。

これは、あくまでゲームの話しであって、失敗してもやり直しがきくことだ。であれば、実際のビジネスはどうか。

実際でも同様だ。あくまでゲームであって、やり直しがきくものだと私は思う。

※マネジメントゲーム http://www.movenet.or.jp/mg/