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金も名誉も要らないというのは格好いいが・・・

「私の命、あなたに預けます」そういう家臣や部下がいる。戦国大名とはそもそも人の命を預かる職業だし、任侠の親分や政治結社のリーダーなどもそうだろう。西郷隆盛の元にも多くの血気盛んな部下や後輩が集まってきた。そんな西郷が、「金もいらない、地位も名誉もいらない、そんな捨て身の人間ほど恐いものはない」と語っている。人の命をあずかる者としての責任の重さを感じていたようだ。

ことわざで、「虎は死して皮を残し、人は死して名を残す」というのがある。今を生きる私たちは自分の命と引き換えに人生で何を残そうとしているのだろうか。「何も残さなくていい。気持ち良く燃焼できれば」という人も多いだろう。また、「金を残すは下、事業を残すは中、人を残すは上」という格言もある。ある経営者は冗談半分でこう言った。「愚か者は借金を残し、凡人は悔いを残し、非凡人は人を残す」、悪くはない教えだ。

「金や名誉なんて小さい。もっと大きなものを追い求めねば」と考えるのは結構だが、はき違えは禁物だ。まずは大地に足をしっかりとつけよう。

「金や名誉は追い求めるものではないが、良い仕事をした結果としてそれらはついてくるものである」という現実がある。「金がないことなんて大した問題ではない」というのは個人の生きざまとしては許されても、経営者として会社のお金がないことは恥じる必要があるのだ。

「わかった。稼げばいいんだろう」と売上げや収入を増やすことばかりに腐心する人がいる。「収入さえ増えればお金は貯まるもの」と思っておられるわけだが、それも間違いのもと。「稼ぐこと」「残すこと」「増やすこと」それぞれは別の才覚が必要であって、一個の才覚で三つはカバーできないのだ。

あなたの会社が今、幾ばくかの自己資金を残せていないとしたら、ここは素直にご自分の経営力を疑ってみよう。稼ぐことばかりを考えて、残すことや増やすことに無頓着ではなかっただろうか。

売上げさえ増やせば資金に余裕ができるはずと信じて、資金を残す工夫を軽視してこなったか。売上げの多い少ないに関係なく、資金は残さねばならないし、残したら増やさねばならない。それが会社と社員を外圧から守る防火壁や防風林となるのだ。

自己資金を増やす、という目標をもとう。自己資本比率を毎年増やすという目標ももとう。あとは自己資金はいくらあればよいか、自己資本比率は何パーセント以上あればよいかを決め、それに必要な計画と行動を開始するのだ。

「売上げさえもう少し増えれば・・・」ではなく今の売上げで利益と貯金をはじき出す計画を作らねばならない。

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