●腕白で腕っぷしがつよく、テクニックもある。同級生はおろか上級生を相手に喧嘩しても一度も負けたことがない。そんな中学生が、親のすすめで相撲界に飛び込んだ。その日、「殺される」と思った。
●稽古場の土俵脇で始めてみる光景。立ち合いから頭を下げて命がけでぶつかっていくプロの迫力をみて少年は戦慄が走った。
あのド気迫でぶつかられたら、自分は死ぬ。そう思った中学生はふるえた。殺されないようにするためには逃げるのではなく、ぶつかっていくしかないと思った。こわかったが、自分も命がけでぶつかっていった結果、けがをしたり失神したことは何度もあるが、死なずに済んだ。ふと気づいたらずいぶん強くなっていた。
●やがて十両から幕内にも上がった。
当時相撲界の花形力士だった若花田、貴花田とも相撲をとり、勝った。
それが関取・玉海力であり今日の「ちゃんこ玉海力」の代表取締役社長・河邉 幸夫社長である。
いまは相撲界を引退し、会社経営に心血を注ぐ。
「玉海力社長ブログ」を読むと、実に正道を行く本格的な会社経営をされているのが分かる。こわいからぶつかる。わからないからぶつかる。それは会社経営も同じらしい。
★玉海力社長ブログ → http://b-sumou.at.webry.info/
●こんな話もある。
村上龍氏の小説『走れ！ タカハシ』のモデルになった元・広島東洋カープの高橋慶彦選手。彼がカープに入団した時、プロのレベルの高さに圧倒された。「殺される」とまでは思わなかったが、「１年でクビになる」と真剣に思った。
高校野球ではエースで4番。ワンマン選手だった高橋でも、プロでは一番下だった。クビになることを覚悟した高橋は、「どうせクビになるのだったら、納得いくまで練習してクビになろう」と決めた。
●それからがすさまじい。
二軍だから朝から練習、昼は試合、夕方に練習、夜になっても練習し、寝る前にも練習した。練習漬けの毎日を送りはじめた。
食事中も寝る時もバットを離さなかった。血豆が出来ても素振りした。
豆がつぶれて血が出てきてもタオルで巻いて素振りした。タオルはいつも生地の色と血の色でまだら模様になっていた。
●先輩に飲みに連れて行かれても、途中でそっと席を外し素振りした。
「高橋はどこに行った？」と先輩が外まで探しに来たら、店の裏で素振りしている高橋の姿があった。席を外してから2時間経っていた。
「鳥が鳴かない日はあっても高橋が素振りをしない日はない」と言われるようになった。クビになるはずの高橋選手はやがてプロ野球界を代表するスター選手の一人になった。
●このエピソード二題にかぎらず、一流アスリートの多くは意外にも最初にプロの洗礼を浴びている点に注目したい。
怖い物知らずなのではなく、怖い物を見てしまった恐れ。その気持ちに正直になり、そこから逃げずに捨て身でぶつかって壁を乗り越えた。
すると俄然、道が開けるようだ。
●私たちのビジネスにとって命がけの稽古や練習漬けの生活とはどういうものだろうか？
まず、社長業は来年でクビになると考えるようにしよう。今年結果を出さなければ自分を解雇する。
そうすればアイデアをいつまでも暖めているヒマはない。矢継ぎ早の経営改革を行うはずだ。
●「この会社は来年つぶれる」と受け入れよう。
そうしたら悔いが残らないよう頭のなかにあるあの手・この手をみんなやっておこうと考えるに違いない。
●毎朝早くから夜遅くまでハードワークするのは当然のことながら、それ以外に大事なこともたくさんある。
本を読む、定期的にセミナーや講座で学ぶ、経営計画や行動計画を作る、計画にそって行動する、行動の結果を見ながらふたたび計画を修正し行動を変える。それらを愚直に継続する。
●今日練習したことがすぐに成果につながることなどない。ビジネスのアイデアも同じで、大半の挑戦がうまくいかない。思い通りにならないのが当たり前だと受け入れると、小さな挫折にめげてなんかいられない。次々に新しい挑戦をすることが常の姿になる。
やがて、ドッカーンと市場から反応がかえってくるか、それとも小さな前当たりがコツンと来る。その一点を一意専心、深掘りしていくのだ。
●隠し球をもたない。一切の余裕は排除して命がけで経営しよう。
懸命な練習はウソをつかない。必ず活路は開ける。
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【編集後記】
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お近くの方は予定をあけておいて下さい。
