●駅構内にはマクドナルドとスターバックス、マツモトキヨシがあり、一歩外へ出たら東横インとワタミと牛丼チェーンがある。どこへ出かけても同じような街並みで、ローカル色がどんどん薄らいできた。
これでいいのか日本の風景。
●それはスーパーマーケットも同じで、入り口に果物や野菜があり、その奥に魚や肉があり、総菜があって冷凍食品がある。通路は広めで売り場は整然としていて見晴らしがよい。自分がいま、ヨーカドーにいるのかイーオンなのか、ヤマナカなのかマックスバリューなのかは自覚することがほとんどない。
●その点、「ウオダイ」に行くと「私は今、ウオダイに居る」と強烈に自覚することができる。ウオダイの通路は狭く、いつも人で混雑していて通りにくい。売り場も少し雑然としているように見える。どうみても、合理的な買い物をするには不便そうな売り場だ。だがお客は品定めに熱狂している。価格にビックリしている。
店内に定番商品はなく、100％特売品。売り場の 7～8割が定番商品の大型スーパーとはまるで違う。いつ行っても宝物さがしのようなワクワク感を得られるのだ。
●当然、運営する方は大変だ。加藤社長自ら毎朝未明には卸売り市場に商品調達に出向く。数量が確保できず、大手スーパーに出荷できなかった商品が放出価格で手に入る。1時間遅く行くと、すでに品はない。
特売品 100％の店なので、今日仕入れたものが今日・明日の売上を作る。
たくさん売れ残ったからと行ってそれを定番商品のように売り場に並べることはしない。物理的にそれができる売り場面積でもない。
だから命をかけて仕入れ、命がけで売り切る。仕入れと販売の意思疎通の良さがなせる芸当だ。
●3月5日（月）、名古屋市金山の札幌かに本家にスタッフ55名のほぼ全員が集結した。
店長の司会で開会。加藤社長から来賓の紹介があった。メインバンクとサブバンクの支店長、顧問税理士、顧問労務士、経営者仲間数人とその社員、それに私を含めて20名近い来賓になった。
●そのあと、加藤社長から59期の経営方針が発表された。
有限会社沖縄空間さんの経営計画書の表紙には社員の顔写真が載っているとメルマガで読んで、加藤社長もそれを採用することにした。
いたるところに社員の写真やお客様の写真、売り場や商品、チラシの写真であふれている。最後の数ページにある「みんなの Wish-List」には、パートさんを含む全員の顔写真とそれぞれの Wish が載っていた。
●「会社の利益は二の次、三の次でええ。それは目的ではなくて手段なのだから。私がウオダイを経営する目的はただひとつ、それは社員さんの幸せです。私の仕事は社員さんを幸せにすることであり、社員の皆さんの仕事はお客さんを幸せにすることです」
●「4年後に新店舗を出します。売り場も社員さんも3倍になります。
それを実現するまでの今日からの 3年間が私たちの勝負時です。会社を変革します。どのように変革すべきかは全部この経営計画書に書きました。あとは計画に沿って実行し、うまくいかなかったとしても諦めず根気よくやって、やれるようになるまで努力していくだけです」
●社員全員がポストイットカードに無記名で感想を書いた。それを壁に張り出し、人気投票を行った。
一位をとった感想は、20代の元ヤンキーの女性（レジ担当）が書いたものだった。
「すごく刺激的な時間でした。社長があの年であれだけ夢をもってがんばっているのを見て、私も夢をもってがんばろうと思いました」
それ以外にも傑作が続いた。
「もっと重い責任を任せてもらえるようにがんばるしかないと思った」
（30代 仕入れ担当）
「私の店内アナウンスを社長が評価していてくれたと知って大感激です。これからも私のアナウンスで売上が一円でも伸びるようにがんばります」
（30代売り場担当）
「社長を男にしたいと心から思いました」（50代刺身担当）
●かに会席を頂戴しながらの懇親会は大いに盛り上がった。
社歴は来年60周年を迎える老舗だが、超激安スーパーウオダイとしてはまだ3年目のベンチャー企業。一度どん底をくぐってきているだけに、そんじょそこらの3年目ではない。
ウオダイの挑戦はまだ始まったばかりなのだ。
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