「Fさん、俺らはこのゲームに真剣に勝ちに行こうよ。私はこうみえてもプロの経営コンサルタントをやっているんで、負けるわけにはいかんでしょう。」
「よし!心強いっす、武沢さん。やりましょう。」
日本という国を任された武沢とFさんの二人は、自国を代表して戦略・外交・製造・販売につとめビジネス戦争に勝利するために牙をむいた。
これは、株式会社ウィルシード(船橋 力社長)が開発したトレーディングゲーム研修会のひとこまで、昨日の出来事。主催は大阪の関西ビジネスインフォメーション。
所定のゲーム時間内でもっともお金持ちになることを競う。要するに国別対抗のビジネスゲームだ。研修の性質上、詳細を書くことは出来ないが雰囲気をお伝えするだけでも面白いのではないか。
テーブルは6個。フィリピン、ラオス、アメリカ、日本、インド、中国のいずれかに席をとる。与えられた条件は国ごとに異なる。たとえば資源大国のインドや中国では、最初から天然資源がふんだんにある。この天然資源がないことには、最終製品を作ることができず、売上を上げることはできない。
一方、先進国の日本やアメリカには、機械や道具がふんだんにある。
おまけに最初から所持している現金も他国より多い。資源大国も、この日米がもつ機械や道具がないことには製品が作れない。
ゲームの上ではフィリピンとラオスは過酷なスタートとなる。ほとんど何もない状態でのスタートなのだ。
「始めて下さい」という司会(国連とよんでいる)の宣言で始まる。
最初の何分かは何をしてよいのか分からない。他国の様子を見ながら、自国の置かれた強みや弱みを把握し、そこから戦略を練る。
活発に他国同士も交渉が始まっており、資源と道具を交換する国があったり、無償で道具をプレゼントする太っ腹な大国がいたりする。
それらすべてが外部環境の変化だ。そこに国連がときどき予期せぬアナウンスを発する。
「たった今、第一回預金の金利が付きました。金利は○%です。」
「○国で内紛が勃発しました。同国とは交渉することができません。」
「日本語の使用が禁止になりました。英語のみ使用可能です。」
「△国で大地震。天然資源が減ります。」
こうした予想外のアナウンスがほぼ5分間隔で発せられる。その都度、会場は、「ヘェー」「ウォー」「マジで」とヒートアップしてゆく。
そんな中、ただひたすら製造に励む国、資源や道具を求めて外交を重ねる国、交渉巧みに相手の足元を見て交渉する国など、人それぞれの個性や特色が出て面白かった。
ところで、武沢の日本は何位だったのかという質問があるに違いない。まことに遺憾としか言いようがない第五位で終わった。忸怩(じくじ)たるものがある。おまけに最下位の六位がアメリカであり、この二大先進国が5位、6位になるケースは極めて珍しいという。
このゲームの過去数百回のデータでは、すべての国が一位から最下位までを経験しているという。そして興味深いのは、大学生対象、新入社員対象、中堅社員対象、幹部社員対象、経営者対象と階層があがるにつれて平均獲得点数が上がっているというのだ。
大学生からわずか半年しかたっていない新入社員でも、確実に学生たちよりポイントをあげるという。
その理由のひとつに、リソース(資源)活用というものがある。自国の机の上に使っていないコンパスや鉛筆けずりがずっとおいてある。優れたビジネスパースンは、資源を遊ばせておくことを好まない。すべてがフル稼働してくれることを期待する。また、その可能性がないとみたら、さっさと売却するか、何かと交換する。
学生がやると、足りない資源や道具を集めることに時間を割いてしまう。集めた道具や資源はけっこう遊んでいたりする。つまり、ないものねだりして完全な状態を作ろうとするのだろう。
ところが社会人がやると、リソースが足りないことに日頃から慣れている。与えられた環境・リソースで成果を出すのが仕事だと分かっているので、ないものねだりなどしない。その分、知恵を出す。知恵を使えば必ず我が国も優勝できたと、いうことにすべての参加者が気づくのだ。
人というリソースもしかり。仮に稼働率が低いスタッフが自国にいたら、忙しそうな他国に人材派遣しても良いのだ。このように、限られたゲーム時間内で一番多くのお金を稼ぐには、リソースをフル稼働させるしかない。事実、昨日の大阪のゲーム会で優勝したのは、もっとも資源に乏しいフィリピンだったのだ。
ちなみに昨日の順位。
一位:フィリピン、二位:中国、 三位:ラオス、
四位:インド、 五位:日本、 六位:アメリカ
リベンジをかねて、
「がんばれ社長!」トレーディングゲーム大会を企てようと思った。
トレーディングゲームの概要
http://www.willseed.co.jp/bt/tg/01.html
関西ビジネスインフォメーション http://www.kbinfo.com/