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分かりません、と言うな

●ある講演会のとき聴衆の皆さんに向かって「日本にはいくつの会社があるか分かりますか?」と聞いてみた。
シーンとして誰も返答しないので、最前列の端にいた男性を指名したところ、「分かりません」と即答した。「分かるわけがない!」とでも言いたげに憮然としている。

●「分かりません」ではなくて想像してみてください、と私が言うと「想像もつきません!」とあいかわらず即答する。

「頭をつかって想像してください」と私が再度要求したら、ようやく「五千」と返答した。根拠はなんですか?と聞くと、「ありません!」という。困ったものである。

●役職を聞いてみたら建設会社の営業部長だという。社長に言われて講演を聞きに来てくれたそうだが、こうしたスタンスの幹部を使う社長は大変だろうなと思う。少しは考えてみろよ。

●いかなる問題を出されても、何らかの事実や仮定の数値に基づいて論理的に考えていけば答えは導き出せるものである。

たとえば、日本には女性が何人いますか?
と聞かれたら、「分かりません!」とは答えないはずだ。

日本の人口と男女比が分かればすぐに答えがでてくるわけで、約 1.3億人の人口の半分が女性なので 6,500万人という答えが導き出せればほぼ正解する。仮に正解とはかけ離れていた場合でも、仮定の値が違っていたか、考えのアプローチが間違っていたかということがわかり、次の機会に学習することができる。

「分かりません」「想像もつきません」とか当てずっぽうで数字を言っているようでは幹部はつとまらない。

●数年前のある日曜日、名古屋市内。

ある会社の経営計画発表会が終わって昼食時間になった。午後からは三時間ほど「ゲーム研修」の予定になっている。私は午前の部だけで退席し、午後から映画に行く約束をしていた。

●ところが昼食時になって総務部長が血相をかえてやってきた。

「大変です。台風の影響で新幹線がストップし講師のK先生が列車の中で立ち往生されています。まだ小田原あたりだそうで、とても間に合いません」

●私はなにも聞かなかったことにして映画館に向かいたかったがそういうワケにも行かず、午後の部をお手伝いすることにした。

突然与えられた午後の3時間をどう過ごすかである。

●一般的な社員教育のための講演か、「Wish-List」による目標設定研修をやってはどうかと思ったが、総務部長の意向は別だった。

この会社は営業所が散らばっていて、日頃なかなかコミュニケーションが取れないので、ゲーム形式の研修を是非ともやりたいという。

●ご期待にそえるかどうか分からないが、とにもかくにもグループ・ディスカッションのテーマを作り、グループで議論して答えを導きだしてもらうことにした。

●50人ほどの社員数だったので、まず8班に分けてもらった。つまり、6~7名で一班だ。
私が用意した問題は多少テーマに偏りがあるが、次のようなものだった。

・日本には会社の数が幾つあるか
・世界には会社の数が幾つあるか
・日本にはコンビニが何店舗あるか
・日本中のコンビニの総売上は幾らか
・この部屋からみえるあそこのマクドナルドの年間売上げは幾らか
・日本には株式を公開している会社がいくらあるか
・日本にはプラネタリウムが幾つあるか
・中国ではコカコーラが年間何本飲まれているか
・東京都内には寿司屋が何店舗あるか
・日本人全体でペットボトルの水を年間で何リットル飲むか

もっとも正解が多いチームにはご褒美を用意してもらうことにした。

●皆目見当がつきません、と社長も苦笑いしている。ま、とにかくやってもらうことにした。

<明日につづく>