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音楽によるメッセージ

●おや、雨だ。しかも結構強く降ってきた。予報は「晴れ」だったのにどうしたことだろう。どこかで雨宿りをするか、傘を手に入れよう。
この日は都内での休日。私は急ぎ足で新宿伊勢丹メンズ館に駆け込んだ。

●店内に入ると、まっさきに地下にある紳士靴のコーナーに行ってみた。ここは品揃えが充実していて、なかなか良い靴が買える。
物色を始めたとたん、近くにいた女性店員が私にむかって意外な言葉をかけた。

「こんなお天気の中、よくお越しいただきました。ごゆっくりどうぞ」

●私はびっくりした。

「どうして外が雨だと分かったのですか?」

彼女はニコニコしながら「それも私どもの仕事ですから」と交わしたが、きっと何かの連絡網か隠語によるアナウンスがあるに違いないと思った。さすが伊勢丹、よくできている。

●その話を別の場所でしたところ、ある経営者が教えてくれた。それは音楽なのではないかという。通常の BGM 以外に次のような連絡用の曲が決められていて店長の意思を音楽で伝えることがあるそうだ。

・雨が降ってきたときの曲
・雨があがったときの曲
・店内が混み合ってきたので効率良い接客を心がけましょうという曲
・店内がすいているのでじっくりした接客を心がけましょうという曲

●例えば雨が降ってきた曲が流れると、店員は接客でそれを話題にしたり、買い物袋にカバーをかぶせたりする。さらに女性の化粧室にはドライヤーが置かれて髪を乾かすのに利用してもらうそうだ。

●なるほどねぇ、と唸った。
音楽ひとつで店内のオペレーションが変わるとは日本のデパートは大したものである。

●これは接客業だけでなく一般のオフィスにも使えるのではないかとも思った。

・会話と休憩を減らし集中して業務に没頭しましょう、という曲
・笑顔とコミュニケーションを大切にして、互いに声をかけあいましょう、という曲
・今日はノー残業デーですからお忘れなく、という曲
・業績に直結する活動に専念していますか、と問いかける曲
・経営理念を実践していますか、という曲

●目的に応じて曲をかけ替える。それによってリーダーの意思が全員に伝わる。

これは一考の余地があるテーマである。