未分類

毎日が大安吉日

●数年前、中国の青島(チンタオ)からお招きがあり、講演に出向いた。それは忘れがたい講演会になったのだが、それはさておく。

翌日は市内観光にしていたが、現地の幹事さんが「武沢先生、近郊の山の頂きに有名な占い師がいます。仏教系の導師で、占いもできる方です。大変よく当たると評判で、中国全土からみてもらいに来る人が後をたちません。せっかくの機会ですから先生も運命をみてもらいませんか?」とおっしゃる。

ホテルから片道3時間かかるそうだが、日本からご一緒した友人三人も誘って行ってみることにした。

●着いてみると、想像していたよりも立派なお寺だった。

息を切らせながら山道をのぼり、ようやくの思いで境内に入る。入り口を入るとすぐに、「仕事運」「財運」「家庭運」「健康運」などと書かれた箱が八つあった。見てもらいたい箱の中からカードを一枚抜く。それに自分の生年月日を書いて順番を待つ。

●お茶を飲みながら一時間ほど待っていたら私の番号が呼ばれた。

ドキドキして部屋に入ると、白髪、白ひげの老人が静かに座っていた。
カードをじっくり見たあと、私の顔をじっとのぞきこみ、なにかを話しはじめた。日本語に訳してもらいながら、15分程度解説を聞いた。
ところどころ私から質問もした。その内容は大いに満足するものだったので、私は1万円出して特大のロウソクを買い求め、お寺に献上した。

●帰路はケーブルカーに乗った。

我々のグループに、Iさんという30歳前後の女性がいたのだが、彼女だけがずっとうつむいたまま元気がない。
ムードメーカーだっただけに気になった私は、「何か言われたのですか?」と尋ねてみた。
すると彼女は、5秒ほどうつむいたままだったが、シャキッと顔を上げ、「はい!しっかり言われちゃいました!」とふっきれた表情で言った。

●「『あなたの人生は去年がピークだった』とおっしゃいました。私、まだこれから起業したいし、結婚もこれからなのに、もうピークが過ぎただなんてどうしましょう」と笑っている。

さらにIさんは自分を励ますようにこう笑った。

「大丈夫ですよ、私は打たれ強いんですから。いつも占いは良くないし、おみくじなんかでも大吉が出たためしがありません。でも実際に悪いことなんかなんにも起きてませんから」

●悪いことをしちゃったなぁ。誘うんじゃなかったと思った。
人は目にみえないものを信じたい。神や仏を信じるか、自分を信じるか。自分を信じる場合でも、できれば運勢や運気といった見えないものを味方につけたいという思いが我々にはある。良かれと思ったことがアダになったわけだが、その翌年、彼女は結婚した。救われる気分になった。

●日本には「六曜」(ろくよう、りくよう)というものがあり、それによって結婚式や葬儀や建築関係の日取りやビジネスの契約締結日が決められる。

迷信のひとつなのだが、「六曜」によれば、次のように解説されている。

・先勝 万事早きが吉 午後二時より 六時までは 凶なり
・友引 この日正午のみ凶 朝夕大いに吉なり 儀式を忌むべし
・先負 この日静かなる事に吉 午前中は凶 午後より吉なり
・仏滅 この日凶日なれば何事も忌む この日病めば長引く
・大安 吉日なり 婚礼 旅行 移転 開店 その他万事よし
・赤口 凶日なれば 何事に用いて悪し 但し正午のみ吉なり

要するに六日あるうち五日は動きづらいというわけだ。世間ではそれにこだわる人がいることは認めよう。だが、せめて自分の行動を決める時には、そうした迷信にとらわれないことが大切だ。
あえて慶事に仏滅を選ぶのも、逆の意味でとらわれている。「六曜」を始めとして迷信を何も気にせずに意志決定することが私たちをを強くするし、それこそが開運のきっかけにもなると思う。