●昨日号で株式会社タニサケ(岐阜県揖斐郡池田町)さんをご紹介した。”無名”ながら、すごい内容の会社として半ば自慢めいて書いたものだが、知らなかったのは私だけかもしれない。
●読者の方々から続々とメールやFacebookで、「よく知ってます」、「製品の愛用者です」、「松岡会長のファンです」、「タニサケ塾という勉強会に参加しました」、「工場見学してきました」などの声がたくさん寄せられたのだ。
●受けとるたびにへこんでいたが、東京の増永社長や名古屋の斉藤専務から「続きを早く読みたい」というメールもいただいたので、多少は勇気をいただきながら昨日のつづきを書いてみたい。
●株式会社タニサケ(以下、タニサケ)はタマネギとホウ酸を原料にしたゴキブリ殺虫剤を作っている会社。
社員数は37名(パート5名含む)。年間売上高は8.4億円で、経常利益はなんと2.1億円もある。売上げの4分の1が経常利益という超高収益企業であり、自己資本比率にいたっては、おどろきの97%。
●なぜこんなに高収益なのか。ひとつは、圧倒的な商品力の高さにある。ライバルメーカーがひしめくなかで、JR(新幹線)をはじめ多くの企業から名指しで大量注文が舞い込む。もちろん家庭用の分野でも競争力が高い。
●タニサケの強味は商品以外にもまだまだある。
それらは、創業者の松岡浩会長の「人間力経営」とでもいうべき真摯な経営姿勢から生まれるものだろう。
かつて松下幸之助は、「松下電器は人を作っています。あわせて電気製品も作っています」と述べたが松岡会長の経営もまさしくそれを実践したもの。
●毎月の社内報で松岡会長は社員の心に切々と訴える。経営者というよりは、求道者が修行者仲間に語りかけるようなメッセージだ。
あるときは「運を味方につけることの大切さ」を次のように説いておられる。
原稿は武沢文責で要約してお届けする。
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私は2歳で母を亡くし、25歳で父も亡くした。それでも周りのすばらしい方々に育てられたおかげで、67歳のいまでも明るく楽しく元気溌剌と過ごしている。
高校生のある時期、不良生徒だったが無事に卒業でき、地元のイビデンに入社した。新入社員であることを意識して猫をかぶっていたら、そのまま真面目になってしまった。
イビデンで経理を学び、営業を学んだ。28歳のとき兄が経営するスーパーマーケットに入った。その直後に兄を亡くし、予期せぬことに自分が社長に就任することになった。大いに商売に励んだが、近くに百貨店ができたことから売上げ不振に陥り、ついにはスーパーを廃業する羽目になった。そのときの経験で学んだことは「値決め」の大切さ。
このようにして、イビデン入社からスーパーの廃業までの間に、経理と営業と値決めという非常に大切な経営の三つのことを学ぶことができた。それは、タニサケ創業の大いなる財産となった。この三つのどれが欠けても今のタニサケはない。
五男一女の末っ子として生まれた私は、男兄弟で唯一生き残り、しかも一番長寿である。病気や怪我をしながらも、主宰する「タニサケ塾」を一日も休まず開催できたことは「強運」というより天の恵みであり、「奇跡」だとさえ思っている
私の「強運」は、今は亡き両親、兄弟、そして縁ある人々が後押しをしてくれている賜だと確信している。
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●別の月には「積極的と消極的」、「自分は自分を創る責任者」といったコラムがあったり、「タニサケ塾」参加者の感想文が載せられることもある。
「中小企業のお手本・応援団長になろう」という松岡会長の想いがこうした取り組みになってあらわれているのだろう。
●松岡会長のもとで作られた「人」はどんな仕事をするか。他の経営者がきっとうらやましがるものが同社にはたくさんある。
まず、工場の床はいつもピカピカでとても製造業の現場とは思えない。
また、営業マンのお礼ハガキは受けとった相手を感動させ、感じの良い挨拶は来訪者を一様にうならせる。
さらには社員一人あたりの改善提案件数ならびに提案報奨金の多さは日本一を誇る。知恵のかたまりのような工場やオフィスになっているそうだ。
「ありがとうカード」の発行も同社の武器。さらには社内報「フレッシュタニサケ」の発行部数が社員数の100倍近い3,000部を突破(欲しがる人が多い証拠)するなど、どこをどう切り取っても作られた「人」が仕事をするとこんなことができるというお手本ばかり。
●地元にいながらこんな会社を存じ上げなかった恥ずかしさと同時に、まだまだこんな会社がたくさんあると想像すると元気も湧く。
来年1月で187回目になる「タニサケ塾」は、あなたの会社訪問を歓迎する。
同社の改善提案活動の様子や、同社発行の小冊子購入、社内報のダウンロードと販売など、ホームページでの取り組みもユニークだ。
詳しくはこちらからアクセスしてみよう。あなたが必要とする何かがあるはずだ。
★株式会社タニサケ → http://www.tanisake.co.jp/